養育費算定表の使い方
現在、養育費や婚姻費用を決める場合には、裁判所が公表している養育費・婚姻費用の算定表を参考にすることが通例となっています。
数年前までは、法律相談の際に算定表の存在を紹介すると、ほとんどの方が「知らなかった」とおっしゃっていましたが、最近では、算定表の金額をチェックした上で相談に来られる方も多く、一般の方にも認知度が上がってきたと感じます。
今日は、算定表をどう見たらいいのか、についてご説明したいと思います。
算定表は下記をご覧ください。(裁判所の公式HPです)
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/
算定表は、表1から表19まであり、
① 養育費か、婚姻費用か
② 子どもは何人いるか
③ 子どもの年齢は0~14歳か、それとも15歳~19歳か
によって場合分けされていますので、該当する表を探して見てください。
ここでは、表1 養育費・子1人表(子0~14歳)を例にとります。
(1) 両親の収入額を確認する
縦軸には「義務者の年収/万円」と書かれていますが、義務者というのは養育費の支払義務者のことです。
横軸は「権利者の年収/万円」と書かれていますが、権利者というのは養育費を受け取る人のことです。
つまり、子の母から父に対して養育費を請求する場合であれば、縦軸が父の年収、横軸が母の年収になります。
縦軸も横軸も、「給与」と「自営」に分かれていますが、給与所得者であれば「給与」、自営業者であれば「自営」の欄の数字を見ます。
ここでいう年収は、税金や社会保険料などを含めた、収入総額を指します。
つまり、いわゆる「手取り」ではなく、「額面」になります。
給与所得者の場合、源泉徴収票でいうと「支払金額」の欄に書いてある額で、何も引かれていない状態の額で見て下さい。
自営業者の場合には、確定申告書の「課税される所得金額」に書かれている額が「年収」になります。
ただし、「課税される所得金額」は、実際の収入とは乖離があります。
例えば、青色申告控除を受けている場合、実際には支払いをしていない専従者給与を計上している場合などです。
これらの場合には、実際には支出していない金額が「課税される所得金額」から差し引かれていますので、養育費等の計算に当たっては、「課税される所得金額」に「青色申告控除」「専従者給与」を加算した額を年収として考えます。
(2) 算定表上で、両親の収入額がクロスする場所を確認する
子の父と母の収入額が分かったら、算定表で、どの場所でクロスするかを見ます。
算定表では、25万円刻み(給与収入の場合)で数字が書かれています。
中間的な数字の場合はどこを見たらいいのか迷うと思いますが、近い数字の方を見るものとされています。
例えば、130万円の給与収入がある場合、125万円と150万円では125万円のほうが近いので、125万円の欄を見ます。
算定表は、2万円ずつの幅を持たせたものとなっています。
例えば2~4万円の枠内にクロスするポイントがある場合、個別的な事情を考慮して、2万円から4万円の間で決めるものとされています。
クロスするポイントが4万円に近い場合は4万円、2万円に近い場合は2万円、中間にある場合は3万円が標準額となります。
ただし、個別的に考慮すべき事情がある場合はこの限りではありません。
(3) 算定表の金額は、公立学校へ通うことを前提にしている
算定表は、公立中学校・公立高等学校に関する学校教育費を指数として考慮しています。
つまり、公立学校にかかる費用は織り込み済みなので、子どもが公立学校に通っている場合は、学費を加算するよう求めることはできません。
私立学校に通っている場合にその学費を加算できるかどうかについては、支払義務者の了解があったかどうか、支払義務者の収入・資産状況等によって判断されます。
当事務所では、女性弁護士が養育費に関するご相談をお受けしております。
お気軽にご相談ください。
成人しても養育費を受け取れる場合とは?
通常、養育費を受け取れるのは成人するまで。
調停や審判、判決でも、養育費の終期を「20歳の誕生日を迎える月まで」と定めることが圧倒的に多いです。
ただし、これにも例外があり、
20歳よりも短くなる場合、20歳を超えても養育費を受け取れる場合があります。
20歳より短くなるのは、例えば、子どもが高校を卒業してすぐに働き始めた場合。
そもそも、養育費というのは、自分で生活する力がない子どものためのものですので、
社会人として収入を得るようになれば、養育費を支払う必要性は消滅します。
では、20歳を超えて養育費を支払ってもらえるのはどのような場合でしょうか?
もっとも多いパターンは、学生の場合。
4年制の大学などに通っていて、20歳を超えても自力で生活する収入を得られないケースでは、22歳までの養育費が認められることがあります。
また、子どもに障害・病気があるなどの理由で、成人しても自立ができない場合にも、20歳以降の養育費支払義務が認められます。
もっとも、大学に行っていれば必ず22歳までになるというわけではなく、
養育費の支払者(父であることが多い)が大学進学を承諾しているかどうか、経済的余裕があり学費の負担が可能であるかどうか、親の学歴や職業、家庭環境など、いろいろな事情を考慮して決められます。
特に、養育費の支払者が大学進学を承諾しているかどうかが重要なファクターとされることが多く、
父親に相談なく勝手に大学に進学した場合には、養育費は20歳で打ち切られる可能性が高くなります。
学費に関しても同様の考え方が採られており、養育費支払者の承諾の有無がモノを言います。
子どもが小さいころに離婚して、父親と音信不通の期間が長く続いた場合などには、父親に相談せずに大学進学を決めることも多いように思います。
進学が決まってから、改めて大学にかかる費用が高いことを知り、父親にも負担をお願いしたいというお気持ちになる方もいらっしゃいます。
しかし、進学を決めてから話を持っていきますと、「進学を承諾していない」と主張され、支払いに応じてもらえないことになりかねません。
気持ちの面でも、「何の相談もなく、金銭の要求だけか」と思われてしまい、快く支払ってもらうことは困難になりますので、進路を決める段階から、父親と連絡を取り合い、相談しておくことが肝要だと思います。
子どもにとっても、父親と進路について話し合うことは有益であるはずです。
進路を決める段階で、思い切って父親と進路について意見を聞き、大学進学について承諾を得ておくことをお勧めいたします。
ただし、承諾がなくても、
親の経済状況に余裕があり、きょうだい全員が大学に進学しているなどの事情がある場合などには、明示的な承諾がなくても養育費の支払いが認められることもあります。
また、20歳以降の養育費については、成人しており、アルバイト収入を得ることも多いということで、19歳までの金額よりも減額されることが多いのでご注意ください。
当事務所では、女性弁護士が養育費に関するご相談をお受けしております。
どのようなことでも結構ですので、お気軽にご相談ください。
子どもがいない場合の遺産相続
最近、
「私には子どもがおらず、配偶者もいないのですが、遺産は誰のものになるのですか?」
というご相談を数件続けて受けましたので、今日は、このテーマを取り上げたいと思います。
配偶者も子どももいない場合の第一順位の相続人は「直系尊属」です。
「直系尊属」とは親、祖父母、曾祖父母…を指します。
直系尊属が全員すでに亡くなられていている場合は、相続人は「兄弟姉妹」です。
兄弟姉妹のみが相続人の場合、相続分は均等となります。
つまり、兄弟姉妹が2人なら2分の1ずつ、3人なら3分の1ずつを取得します。
特定の親族に相続させたい場合
冒頭のような相談をされる方の多くは、
「兄弟姉妹全員に均等に相続させるのではなく、世話になった特定の兄弟姉妹に財産を引き継いでほしい」
あるいは
「兄弟姉妹は一切面倒を見てくれなかったので、他の人に財産を渡したい」
という希望をお持ちです。
そのような希望がある場合は、遺言書を書いておくことを強くお勧めします。
遺言書がなければ、法律の規定にしたがって、兄弟姉妹全員に平等に相続権が発生します。
生前、見舞いにも来なかったのに財産だけを要求してきたが、何とか断れないのか、というご相談もよく耳にしますが、法律上は相続権がありますので、ご本人が放棄しない限りはどうしようもありません。
なお、兄弟姉妹以外の法定相続人は、遺言上は一切財産をやらないと書いてあっても、相続財産のうちの一定の割合を確保する権利を持っています(「遺留分(いりゅうぶん)」といいます)。
これに対し、兄弟姉妹の場合は「遺留分」が認められていませんので、兄弟姉妹が遺言書の内容に不服であっても、何らの主張をすることもできません。
兄弟姉妹がすでに死亡している場合
さらに、兄弟姉妹の中に、ご本人が亡くなるより前に死亡した方が含まれる場合、
その兄弟姉妹の子が、つまり甥・姪が相続人となります。(代襲相続、といいます。)
今、70代以上になっている方の中には、兄弟姉妹が7人8人と大変多い方も珍しくなく、甥・姪も含めて相続人が10人以上の人数になることもあります。
そうなると、相続手続に必要な印鑑をもらうだけでも一苦労です。
遺言書があれば、法定相続人全員の印鑑をもらう必要なく、指定された人が単独で相続手続きを行うことができますので、そういう意味でも遺言書を作成することにはメリットがあります。
当事務所では、相続・遺言書に関するご相談をお受けしております。
お気軽にご相談ください。
自分で離婚調停を申し立てたい方へ
本日は、ご自分で調停を申し立てるにはどうしたらいいか?というお話をしたいと思います。
件数の多い離婚調停についてご説明しますが、基本的には他の種類の調停も同じです。
離婚の法律相談に来られる方からは、「弁護士を立てないと離婚調停はできないのですか?」という質問をよくお聞きしますが、もちろんご本人のみでも調停申立ては可能です。 調停は、基本的に裁判所の力を借りて当事者が話し合いを行うものなので、法律に詳しくない方でも利用しやすい制度だと言えます。
ご自身で調停を申し立てる場合には、
①申立書を書いて、
②添付書類を準備して、
③印紙と切手を買って、
④裁判所に提出しに行けば
完了です!
① 離婚調停の申立書
申立ての書式は、お近くの家庭裁判所に行って「用紙下さい!」と言えばもらえますし、ネット上でダウンロードすることもできます。
裁判所が提供している離婚調停の申立書書式及び記入例はこちらをクリックしてください。
調停申立書は、裁判所用と相手方送付用の2通を準備します。
調停申立書は、裁判所を通じて相手方に送付されますので、相手方に知られたくない住所や事情を記載しないように注意する必要があります。
裁判所に申立書以外の資料を提出する場合も、基本的には2部用意し、1部は裁判所に、1部は相手方に渡すという扱いになります。
したがって、例えば源泉徴収票に住所が記載されている場合などは、住所部分を黒塗りにしたコピーを提出します。
黒塗りにすると意味がなくなってしまう書類の場合は、非開示にしてほしいという申し出を行うことができますが、非開示にするかどうかは裁判所の判断となり、100%非開示が保障されるというわけではありません。
② 添付書類
申立書には、必ず戸籍謄本を添付します。
離婚と同時に年金分割を請求する場合には、「年金分割のための情報提供書」が必要です。
「年金分割のための情報提供書」は、厚生年金の場合は年金事務所にて申請しますが、その申請のためにも戸籍謄本が必要となりますので、年金分割を希望される方は、戸籍謄本を2通取り寄せておきましょう。
③ 費用
離婚調停申立てに必要な費用は収入印紙1200円分と、当事者に連絡するのに使う郵便切手代です。
郵便切手代は、大阪の場合は1000円程度ですが、82円が何枚、10円切手が何枚、というように内訳が決まっており、切手を購入して窓口に持参する必要がありますので、事前に裁判所に問い合わせてください。
裁判所内の売店等でセット済みの切手を販売している場合もあります。
④ 提出先
提出できる裁判所は、原則として「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」になりますのでご注意ください。
裁判所の手続は、当事者の住所によって、どこの裁判所を利用できるかが決まっています。
どこの裁判所になるか調べたい方はこちらをクリックしてください。裁判所のホームページに飛びます。
お互い、近くに住んでいる場合は問題ないのですが、遠隔地で別居している場合は、申立てをする人が、相手方の住所地まで出向く必要があり、交通費の負担が大きくなることがあります。
裁判所が遠い場合、申立書の提出は郵便でも可能です。
当事務所では、離婚調停を代理人としてお引き受けすることもできますし、ご相談だけを受けていただき、ご自分で調停を進めることも可能です。
ご不明な点がありましたら、お問い合わせください。
破産したことを秘密にしたい
破産したことを家族や職場、友人に知られたくないのですが、大丈夫でしょうか?と聞かれることがあります。
一般的に、破産の手続きを進めるにあたって、弁護士を代理人にしている場合には、裁判所からご本人に直接連絡が行くことはありませんし、職場に連絡することもありません。
ご希望があれば、弁護士からご自宅には連絡をしないようにしますので、その旨をお伝えください。
ただし、破産の手続き上、ご家族の協力を得なければならないことがあります。できれば、ご家族には事情を話して理解を得ておくことが望ましいと思います。
具体的には、破産の手続きにあたっては、「世帯」での収支状況を報告することが求められます。
家計の管理を配偶者に任せている方の場合は、配偶者の協力なしでは、破産手続の準備が非常に困難になります。
また、光熱費の引き落とし通帳が配偶者名義になっている場合には、その通帳を提出する必要があります。
また、家族、友人・知人、勤務先が債権者になっている場合には、破産したことを秘密にしておくことはできません。
例えば、勤務先からお金を借りている、知人から購入した物品の代金を支払っていない、など、何らかの支払い義務を負っている場合です。保証人になってもらっている場合も同様です。
このような場合は、相手方を裁判所に提出する「債権者一覧表」に載せなければならず、相手方には裁判所からの通知が送付されます。
なお、破産すると、必ず、「官報」という国が発行している新聞のようなものに住所と名前が掲載されます。
官報は誰でも見ることができるものなので、厳密な意味で秘密にしておくことは不可能です。
しかし、官報に掲載される情報量は膨大で、一般の方で、これをチェックしているという人はほとんどいません。
したがって、たまたま、官報に名前が載っているのを知人に見つけられてしまった…という事例はまずありません。
破産申立てに関してご心配なことがある方は、ご遠慮なくご相談ください。
メールでの相談にも応じております。
別居中の生活費は遡って請求できる?
今回は、何年も別居したままで離婚が成立しない場合、永遠に婚姻費用を請求し続けることができるのか?という問題について考えてみたいと思います。
別居が長いと婚姻費用が減ることがある
一般に、戸籍上の夫婦である限り、別居していたとしても、籍を抜くまでは婚姻費用の請求は可能とされています。
ただし、別居期間が長くなって、事実上婚姻関係が破綻している場合には、請求できる金額が少なくなるという考え方が主流で、家庭裁判所の審判でもそのような考え方に基づくものがあります。
しかし、具体的に、別居が何年になったらどの程度軽減されるのか、ということを示した基準はありません。
婚姻費用の金額は、当事者間で折り合いがつかなければ調停を申し立て、調停でも双方の協議がまとまらなければ裁判所が審判で金額を決定する、という流れになるのですが、最終的には裁判所の判断によって金額が決められることになります。
別居の原因も重視されている
婚姻関係が破綻していると認められる場合は、その原因がどちらにあったか?ということも重要視されていて、妻に全面的な責任がある場合には、妻の分の婚姻費用は請求できません。
その場合でも、子どもがいれば子どもの分の婚姻費用(つまり、養育費相当額)を受け取ることは可能です。 妻に全面的な責任がある場合とは、例えば、妻が不貞行為を行い、家を飛び出した場合などです。
ただし、破綻の直接的な原因のほかに、破綻に至る経緯や、関係を修復するために努力したかどうか、双方の経済能力など、さまざまな事情が考慮されますので、一見、妻に全面的な責任があるようにみえても、一定の婚姻費用分担が認められることもあります。
成人の子がいる場合
婚姻費用にカウントされるのは、自立した生活を送ることができない子どものみなので、成人に達した場合は、原則としてその子の婚姻費用を請求することはできません。
しかし、現実には、成人していても、病気や障害、あるいは就学などの理由で生活能力がないことがあります。 例えば、大学生の場合、親に経済力があり、大学進学を承諾している場合には、成人であってもその子の分を含めた婚姻費用を請求できると考えられています。
ただし、成人である以上、未成年者と同じ程度の金額になるわけではなく、アルバイト収入相当額を差し引くなどの修正が加えられます。
当事務所では、女性弁護士が離婚にまつわるさまざまなご相談をお受けしております。
ネットからのご相談も可能ですので、どうぞご利用ください。
調停で相手と顔を合わせたくない
よくお受けする質問の一つに、「調停では相手と顔を合わせなければなりませんか?」というご質問があります。
離婚の調停では、待合室も別々、調停委員が話を聞くのも別々です。
まず、申立人だけが調停委員に話を聞いてもらい、申立人が席を外した後に相手方が入室するという形で、申立人と相手方が交互に調停委員と面談しますので、基本的に相手方と対峙する場面はありません。
話し合いがまとまって、調停条項の最終的な確認をする時だけは同席することもありますが、これも、どうしてもイヤだという場合には別々にしてもらえることがほとんどです。
特に、DV事案などでは、当事者同士が顔を合わせることでトラブルになる可能性がありますので、裁判所に事情を伝えれば、呼び出し時間や終了の時間をずらしたり、待合室を別の階や離れた場所にしたり、帰る際に通常とは違う経路を誘導してくれたりなどの配慮をしてもらえます。
そうは言っても、同じ時間帯に同じ場所にいるわけなので、鉢合わせの可能性は否定できません。
私は、過去に1度だけ、当事者が裁判所の中で偶然出会ってしまったという経験があります。
これはDV事案ではなかったのですが、鉢合わせした際に要求を飲むように迫られてご本人の恐怖心が非常に強くなり、どうしても相手方と同じ日に裁判所に行くことができなくなってしまいました。そのため、最終的には別々の日に調停期日を開いていただきました。
しかし、これは非常に稀なことだと思います。
相手に会うと身の危険を感じるというほどならば、一人で行動しないほうがいいと思います。親族や友人に付き添ってもらうか、調停段階から弁護士を依頼した上で、どこかで弁護士と待ち合わせをして、一緒に裁判所に向かうようにすることをお勧めします。
離婚後に受け取れる手当はいくら?
児童扶養手当(母子手当) 離婚後に受け取れる「母子手当」。
正式な名称は「児童扶養手当」と言い、現在では父子家庭も支給の対象になっています。
法律相談でも、児童扶養手当はいくらもらえるのでしょうか?というご質問をよくお聞きします。
とても気になるポイントだと思いますが、所得の額や税法上の扶養親族の数によって算定され、人によってかなりの幅があります。
児童扶養手当は、18歳になる年の年度末まで(=高校卒業時まで)支給されますが、障がいのある子どもの場合は20歳まで延長されます。
また、一定以上の所得がある方は受給できません。
この「所得」は、給与や営業所得だけではなく、これらに加えて、別れた夫(妻)からの養育費の8割がカウントされます。
なお、従来、公的年金を受給されている方には児童扶養手当は支給されていませんでしたが、平成26年12月より、年金額が児童扶養手当の額よりも低い場合は、差額分の児童扶養手当を受け取れるようになっています。
具体的な金額ですが、子ども1人の場合、全額支給の場合は42,000円。
一部支給の場合は9,910円から41,990円の間で、収入に応じて10円きざみで決定されます。
子どもが2人の場合は5000円加算、3人以上の場合は1人につき3000円加算となっています(加算額は全部支給でも一部支給でも同額)。
なお、以上の額は平成27年4月以降の額です。
児童手当との関係
児童扶養手当と似た名称のものとして、「児童手当」があります。
児童手当は、15歳になる年の年度末まで(=中学校卒業時まで)支給されるもので、ひとり親家庭でなくても支給対象になるのに対し、児童扶養手当はひとり親家庭の援助という意味合いで支給されるもので、上記のとおり支給は高校卒業時までです。
児童手当と児童扶養手当は、それぞれの要件に該当していれば両方受け取れます。
別居中に児童手当を受け取るには
離婚前にお子さんを連れて別居しているお母さんから、「夫が児童手当を渡してくれない」という訴えを聞くことがあります。
児童手当は、子どもを監護し、生計を同一にする父または母に支給されます。
父と母とどちらに支給されるかというと、所得の高い方に支給されます。現在、一般的に男性のほうが高収入であることが多いので、夫名義の口座に入金されるというケースが多いのです。
別居後もそのままの状態にしておくと、実際に子どもを育てているのは妻なのに、夫が児童手当を取りこんでしまうということが起こります。
このようなケースでは、以前は、夫が手続に協力しない限りは振込先を変えられない、という対応をされていたのですが、現在では、夫婦が別居していて離婚協議中の場合、児童手当の受給者を妻に変更することができるようになりました。
その際、妻が子どもと同居していることを証明するため、住民票上、妻と子が同世帯になっていることが必要とされています。
また、離婚協議中であることを証明する書類が必要です。
例えば、調停中の場合は、離婚調停の期日呼出状、事件係属証明書(家庭裁判所に申請すれば発行してもらえます)などです。
調停を申し立てていない場合は、離婚申入れの内容証明郵便の写しや、弁護士が作成した証明書(離婚について弁護士を依頼しているとき)でも受け付けてもらえるようです。
DV事案で、裁判所から保護命令が出されている場合などに関しては、住民票を移さずに児童手当の受給者を妻にできるケースがあります。また、DV事案では住民票の閲覧等に制限をかけて夫に新住所を知られないようにすることも可能です。お住まいの自治体に必要書類や要件をお問い合わせの上、お手続きください。
不貞行為を理由とした慰謝料の「相場」
離婚の原因が相手方の不貞行為にある場合、相手方に慰謝料を請求することができます。
一般的に、不貞行為の慰謝料の「相場」としては、「数十万から300万円の間」の金額を挙げる例が多いようです。
もちろん、不貞行為の内容によって金額は異なりますので、一概に比べることはできないと思いますが、現在では、不貞行為の慰謝料としては200万円程度が平均的な金額ではないでしょうか。
私は今年で弁護士登録20年目となりますが、弁護士になったころよりも慰謝料の金額が下がってきているという印象を持っていて、同じようなことが書かれた文献を目にしたこともあります。 以前は、平均300万円というイメージでした。
明治時代には、不貞行為は姦通罪という犯罪でした。
それが戦後に廃止され、民事上の不法行為に該当するにとどまることとなりましたが、さらに時代が流れ、不法行為としての違法性の程度も徐々に薄くなってきているのではないかと感じています。
家族の形が多様化し、「結婚」の意味が変化してきていることの一つの表れなのかもしれません。
諸外国では、そもそも不貞行為は不法行為には該当せず、浮気をされても慰謝料は発生しないと考えられている国もあります。
慰謝料を決める要素
不貞行為の慰謝料は、例えば交通事故の場合のような基準は存在せず、「総合的に判断して」決められる形となっています。
そのため、裁判まで持ち込んだ時に認定される金額を予想することは難しいのですが、過去の事例から、次のような項目が慰謝料の算定要素になると言われています。
① 不貞行為の期間、態様、程度
期間が長ければ長いほど、頻度が多ければ多いほど、増額する方向に傾きます。
不貞の具体的な内容も問題となります。
② 結婚期間、それまでの結婚生活の状況
結婚期間が長い場合、長年築いてきた結婚生活が壊されたとして増額事由になることがあります。
また、不貞行為以前の結婚生活の状況も、慰謝料を決める大きな要素です。
従来の結婚生活がきわめて良好であったのに不貞行為によって破綻した場合、不貞行為が結婚生活に与えた影響は甚大で、慰謝料の金額は大きくなる傾向があります。
これに対して、元々夫婦関係がうまく行っていなかった場合、特にその原因が慰謝料を請求する側にあった場合には、慰謝料は減額されるでしょう。
なお、婚姻関係が「うまく行っていない」という状況よりさらに進んで、「破綻した」と評価される状態に達していた場合、破綻後の不貞行為は、そもそも不法行為に該当せず、慰謝料は発生しないと考えられています。
③ 不貞を主導したのが誰か
不貞を主導したのが配偶者・不貞の相手方のいずれであっても金額には影響しないとする考え方もありますが、積極的に不貞を働きかけたかどうかを算定要素とする判例もあります。
④ その他
その他、不貞行為から発覚後の事情に至るまで、いろいろな事情が考慮されます。
例えば、不貞が発覚した際に嘘をつく、別れると約束した後にも関係を継続していた等の事情がある場合、謝罪もせず開き直っている場合などは、より悪質だと評価され、増額の要因になります。
夫婦間にお子さんがいて、お子さんが親の不貞を知って苦しんでいる場合、それを慰謝料の増額要素と捉える例もあります。
また、不貞行為により妊娠・出産という結果が生じた場合は、それ自体の精神的苦痛の度合いが高いことはもちろん、戸籍にも記載が残り、配偶者が子どもの養育義務を負うことにより被る影響が大きいので、慰謝料の増額事由に当たります。
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