家庭裁判所調査官の調査とはどんなもの?

家事審判規則では、「子が満15歳以上であるときは、家庭裁判所は、親権者指定変更の審判をする前に、その子の陳述を聞かなければならない。」と規定されています。

離婚調停や離婚訴訟で親権が争われている場合、子どもの意見を聞く方法として、家庭裁判所調査官による調査が行われることがあります。 あるいは、子どもの年齢にはかかわりなく、そもそも親権者として両親のどちらがふさわしいのか判断する目的で調査を行うこともあります。

調査官とは、法律だけではなく心理学・社会学・教育学等の知識を有する裁判所の職員です。 調査官による調査は、必ず行われるものではなく、特に必要性があると裁判所が判断した事案のみに限られますので、親権を決定する場合には必ず調査がある、というわけではありません。
過去の例では、15歳以上の子どもがいる離婚訴訟のケースで、親権に関しては夫婦間であまり対立がなかったので、子どもの気持ちを書面に書いて出すだけでよい、と指示されたこともありました。

 

調査官の調査はどういうことをするの?

調査官の調査の内容は、主に面談です。

通常、父親、母親、子どものそれぞれに、個別に面談します。

両親の他に、祖父母などが日常的に子どもの面倒を見ている場合には、祖父母などとの面談を行うこともあります。

その他に、保育園や幼稚園、学校などで担任の先生から事情を聴いたり、家庭訪問をしたりする例もあります。

 

面談の場所は、基本的には裁判所ですが、子どもとの面談は、家庭訪問という形で行われることが多いようです。

それは、特に小さい子どもの場合、家庭でリラックスした状態で面談するのが望ましいからだと言われています。また、養育環境の調査が調査内容に含まれる場合は、面接と養育環境の調査を兼ねて家庭訪問するということになるのでしょう。

ただし、ある程度の年齢に達している子どもで、子どもの意思確認がメインとなる場合などは、子どもが裁判所に出向いて面談することもあります。

 

もちろん、これらの面談は、事前に当事者の了解を得て行われるもので、突然、調査官が訪問してくるということはありません。

また、調査官が子どもと面談するときは、できる限り子どもの本心を引き出すために、父親または母親は立ち会わず、また、兄弟姉妹がいる場合にも一緒に面談するのではなく、通常、1対1で行われます。

弁護士が代理人で付いている場合、親の面談には同席させてもらうことができ、多少の補足説明などは可能ですが、子どもの面談には同席できません。

 

調査が終わった後はどうなるの?

調査官は、調査終了後に「報告書」を作成します。

調査官の報告は、裁判官の判断に重要な影響を及ぼしますので、調査官の調査が行われた場合には、必ず内容を確認しましょう。

「報告書」は、原則としては当事者が閲覧・謄写(コピー)をすることが可能です。

なお、閲覧は無料でできますが、謄写は有料です。

 

このように、調査官に伝えた内容は、「報告書」を通じて相手方に伝わる可能性があります。

どうしても相手方に知られては困る場合(例えば、DV事案で住所を秘匿しているが、ある事実から地域が推定されそうな場合など)には、その旨を調査官に伝えれば報告書には記載しないように配慮してもらえます。

ここは知られては困る、という情報があれば、面談の際にはっきりと伝えておきましょう。

 

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「監護権」は私、「親権」は相手と分けることはできる??

親権の中身

親権には、法律的に言いますと、大きく分けて「身上監護権」と「財産管理権」の二つが含まれると言われています。

 

まず、「身上監護権」。

これは、平たく言えば「子どもを育てる権利」のことです。

子どもに教育や医療などを受けさせ、子どもの住居を決めることができます。

また、子どもがアルバイトなどをする場合の許可を与えるのも親権者の役割です。

 

そして「財産管理権」とはその字のごとく、子どもの財産を管理する権利です。

子どもに財産なんてないから関係ない、という方もいるでしょうが、 例えば、万が一交通事故などに遭った場合、損害賠償金を請求することができるのは親権者に限られます。 また、子ども名義で銀行口座を開設することができるのも親権者のみです。

ちなみに、大阪府では高校の授業料無償化が実施されていますが、その条件の一つに、 「親権者全員が大阪府内に居住していること」 というものがあります。
例えば、東京在住の父が親権者になっているけれど、実際には大阪府内で母と居住している場合。 こんな場合には無償化の恩恵が受けられないことになってしまいます。

個人的には、こういうケースを何とか救済できないかと思いますが、親権の有無がこんなところにも響いてくるのです。

 

監護権の中身

監護権というのは、ザックリと言えば実際に子どもを養育する権利のことで、通常は親権者=監護権者となります。

しかし、民法上、親権者とは別に監護者を決めることができるという規定があり、親権者が父(母)、監護者が母(父)というように分けることがあります。

一般的には、監護者を決めた場合には、それは、上で説明した親権の内容のうちの、「身上監護権」を渡したことになる、と理解されています。

 

離婚の際、親権で揉めた挙句、妥協案として親権者と監護権者を分けるという形で決着しようとすることがあります。

しかし、上記の高校授業料の件に見られるように、実際の監護者が親権を持っていないといろいろな手続きをする上で不都合なことも多いので、やむを得ない理由がなければ親権者と監護権者を分けるべきではないと思います。

例えば、最近は高校の修学旅行が海外、という学校も珍しくありませんが、パスポートの申請は親権者に限られています。奨学金の申請も親権者の同意が必要です。 こんな場合はいちいち親権者に連絡を取って手続をしてもらう必要があります。

離婚後も元夫婦が密に連絡を取り合っていれば問題ないのですが、実際にはなかなか難しいことではないでしょうか。

 

また、戸籍謄本を取りますと「親権者」は明記されており一目瞭然ですが、監護権者に関しての記載はされません。

ただ単に子どもと一緒に暮らしているという場合、監護権者として定めたのかどうかがあいまいになり、のちに、親権者から「子どもを引き渡せ」と要求されるなどのトラブルが発生する可能性があります。

はっきりと監護権者として定めていれば、特に理由もないのに子どもの引き渡しを要求されるという心配はなくなります。

したがって、何らかの事情で監護権者を別に決める場合には、その旨の書面を残しておくことが必須です。

 

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親権は何を基準に決めるもの?

今回は、親権を決める際にどんな事情が考慮されるか、ということについてお話したいと思います。

最終的には、さまざまな事情を総合判断する、ということになるのですが、いくつかの原則があります。

 

子どもの意思

 

まず、子どもが15歳以上の場合は、子どもの意思を聴くというルールがあります。これは、家事審判規則の規定に基づくもので、「子が満15歳以上であるときは、家庭裁判所は、親権者指定変更の審判をする前に、その子の陳述を聞かなければならない。」とされています。

もちろん、子どもの希望だけですべてが決まるわけではなく、そのほかの事情も考慮されますが、子どもの意思にはかなりのウエイトが置かれます。

そして、15歳以下であっても、子どもが自分の意見を言える年齢に達していれば、裁判所が何らかの形で子どもの意見を聴くことがほとんどです。具体的には、小学校3~4年生以上になれば、子どもの意見が調停や審判、訴訟手続きに反映されているのではないかと思います。

 

現状の尊重

 

親権に対するひとつの考え方として、「現在の状態が安定していて養育環境に問題がないなら、それを尊重しよう」というものがあり、過去に、このような考え方に基づいて親権を判断した裁判例も多くあります。

この考え方は、例えば、母親が子どもを連れて別居しているような場合、母子間での結びつきがすでに形成されているのに、あえて母子を引き離して子どもを不安定にするのは望ましくないという配慮に基づくものです。

 

 

兄弟姉妹は一緒に

 

兄弟姉妹がいる場合、基本的には引き離さず、同じ環境の中で一緒に養育するのが望ましいと考えられています。もっとも、必ず兄弟姉妹は同じ親権者にしなければならないというわけではなく、何らかの事情がある場合(子どもの意見が食い違う場合や、現に分かれて育てられている場合など)は、親権者が別々になることもあります。

 

母性優先

 

特に小さい子どもの場合には母親の役割が大きいことを理由に、乳幼児では基本的に親権者を母とすべき、とする考え方があります。

もちろん、母親が母親としての役割を果たしておらず、父親(あるいは祖母など)が母親代わりの役割を果たしている場合もありますので、必ず母親が親権者になるとは言えません。
以上、4つの原則についてお話しましたが、この他に、親権者を決める際には、
※ 子育ての環境(住居や同居者など)

※ 仕事等との兼ね合いで時間的に養育が可能なのかどうか

※ 親権者が心身ともに健康かどうか

※ 養育をサポートしてくれる人がいるかどうか

※ 他方の親との面会を上手にサポートできるか
など、さまざまな事情が考慮されます。

 

よく、女性の相談者の方から、「私は夫より収入や資産が少ないので親権を取れないのでは?」というご質問がありますが、収入や資産などの経済的な条件は、実はそれほど重要なファクターではありません。  経済力が劣っていても、養育費の支払いを含めて、子どもの養育に必要な生活を維持できるのであれば、親権者になることは可能です。

 

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免責不許可事由がある場合の自己破産申立て

「免責」とは?

破産の決定があっても、負債の支払が免除されるわけではありません。
さらに、「免責」の決定を受けて初めて、法律上、負債を支払う義務が免除されます。

また、破産決定があると、職業上の資格制限が発生するのですが、免責決定があるとこれが元に戻ります。(「復権」と言います。)

このように、「免責」は破産を申し立てる方にとっては非常に重要なものであり、自己破産をする一番の目的は免責を得ることである、と言えます。

 

「免責」を受けられない場合

破産法では、「免責不許可事由」が定められております。
これに当てはまる場合、免責を受けることができない可能性があります。

例を挙げますと、
● 財産を隠した場合
● 浪費、ギャンブル等によって多額の財産が失われた場合
● 破産管財人に対する説明を拒否したり、職務を妨害した場合
などは、免責不許可事由に該当します。

 

「免責不許可事由」があっても、裁量により免責されることもある

ただし、免責不許可事由があると必ず免責不許可になる、というわけではありません。

破産に至る経緯など一切の事情を勘案して、裁判所が裁量により免責を認めるケースが相当数あります。

大阪地裁の場合、比較的重い免責不許可事由がある場合、破産管財人による生活状況の観察や指導を行い、その結果によって免責を認めるかどうかを判断するという取扱いがなされています。

免責不許可事由がきわめて重大な場合は別として、正直に財産状態を開示し、誠実に説明義務を果たし、破産管財人の指導に従って行動していれば、免責が認められる可能性は非常に高いです。

免責が認められなかったケースの中で目立つのは、財産を隠し、それについての説明を拒否する場合です。

自己破産をする場合、当たり前のことですが全ての財産を正直に申告すること、そして、破産管財人から質問があった場合にはこれに誠実に答えることが不可欠です。

破産者は、破産管財人に対する説明義務、重要な財産を開示する義務を負っており、これに違反することもまた免責不許可事由になります。

 

当事務所では、自己破産申立て、免責申立てに関するご相談をお受けしております。

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離婚しても自宅に住み続けられますか?

離婚の際に生じる難しい問題のひとつが、結婚期間中に自宅を購入した場合の清算です。

 

誰が住宅を取得するのか決める

 

まず、離婚とともに別居するのが普通で、共同で自宅を使うことはできなくなりますので、

① 夫婦のどちらかが住宅を取得し、住み続ける

② 売却する

のどちらかを選択する必要があります。

 

①を選択した場合、通常は引き続き住む者が住宅を取得し、他方の当事者には金銭を渡す形で清算します。

具体的には、自宅の評価額から住宅ローンの残額を差し引き、通常はその2分の1に相当する現金を支払うことになります。住宅ローンの金額が評価額を越える場合(「オーバーローン」の場合)には、財産分与として渡すべき金銭はありません。

 

②の売却を選択した場合は、売却金を清算割合(基本的に2分の1ずつ)に応じて取得することになりますが、「オーバーローン」の場合は売却しても負債が残ります。

例えば、自宅を1000万円で売却できたが、その時点で残っている住宅ローンが1200万円だったとすれば、なお200万円のローンを支払わなければなりません。この場合、夫婦の双方が応分の負担をする必要があります。

 

支払能力がない場合の解決方法

 

いくら自宅に愛着があっても、特別の事情がないかぎり、ローンの支払能力がない場合には住宅を取得することはできません。

例えば、専業主婦で無収入の妻が自宅に住み続けたいと希望しても、住宅ローンを支払うあてがなければすぐに銀行に抵当権を実行されて住宅を失うことになってしまいます。かと言って、妻が住んでいる家のローンを、夫に負担させ続けるのも無理があります。

したがって、妻に支払能力がない場合は、夫に住宅を取得させるという結論にならざるを得ません。

 

ただ、ご本人の年齢・収入・健康状態や、養育するお子さんの状況によっては、すぐに転居できないこともあります。そこで、一定期間(例えば、子どもが学校を卒業するまでの間)建物を使用する権利を認めるという解決がされるケースもあります。

そういう形での解決をする場合には、期間や賃料の有無などの条件を巡ってトラブルが起きやすいので、きちんと書面を取り交わしておく必要があります。

建物の使用は、両当事者の意向や双方の経済状況等により、無償での使用が認められることもあれば、家賃を支払う形になることもあります。

 

また、実際には妻がローンを支払っているのに、銀行がローン及び不動産の名義変更を認めてくれない場合があります。

やむを得ず、夫名義のままで、妻がローンを支払い続けて自宅に住んでいるという方もいらっしゃいますが、そのままではローンを完済しても自分の財産にはならず、夫名義のままです。 少なくとも、夫との間で、ローン完済時には妻に名義変更する旨の約束をしておく必要がありますが、返済期間が何十年にも及ぶことが多く、夫と連絡が取れなくなって名義変更が困難になるケースもあります。 そのようなリスクがあっても、自宅に住み続ける必要があるのかどうかよく見極める必要があります。

 

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離婚と同時に連帯保証を外してほしい

住宅ローンを組むときに、夫が主債務者、妻が連帯保証人となっているケースが非常に多く見られます。あるいは、夫婦がともに連帯債務者になっていることもあります。

連帯保証と連帯債務は、法律的な意味は若干違うのですが、どちらも、夫にも妻にも住宅ローン全額の支払義務がある点では同じです。

 

連帯保証もしくは連帯債務の契約は、夫婦間だけでしているものではなく、銀行などの金融機関との間での約束。

離婚する、しないは銀行から見れば無関係で、連帯保証人もしくは連帯債務者の責任は、離婚してもまったく影響を受けません。

つまり、いったん連帯保証人・連帯債務者になってしまえば、離婚しても支払義務は残ります。

 

他の記事でも触れておりますが、離婚する際、通常は自宅を夫または妻のどちらかが取得することになります。

相当額の住宅ローンが残っていて、妻に支払能力がない場合には、普通、夫が住宅を取得して住宅ローンも支払うという結論になるのですが、このケースにおいて、妻が連帯保証人になっていることもよくあります。

このままの状態だと、何年か先に、夫が何らかの事情で住宅ローンの支払いをしなくなったときには、妻に請求が来るということになってしまいます。

妻としては、そのような状況を避けたいと思うのは当然であり、必ずと言っていいほど、「離婚したら連帯保証人から外れたい」という希望をお聞きします。

 

しかし、上記のとおり、離婚しても連帯保証人・連帯債務者の責任にはまったく影響しないので、「離婚したら当然に連帯保証人から外してもらえる」ということはありません。

連帯保証人・連帯債務者から外れるためには、銀行と交渉し、同意をもらう必要があります。

 

そのためには、代わりに連帯保証人・連帯債務者になってくれる人を探したり、担保に入れることができる不動産その他の財産を提供したりしなければなりません。

または、一定の額を繰上げ返済することで残債を減らし、連帯保証人から外れることが可能になることもあります。

新しい連帯保証人・連帯債務者になる方は、それなりの収入・資力があって、将来にわたって支払い能力がある方でないと銀行の審査を通りませんし、不動産等を担保に入れる場合でも、十分な価値があるものでないとダメです。

これが実際問題としては非常に難しく、なかなか連帯保証・連帯債務を外すことができないのが現状です。

 

連帯保証・連帯債務を外すことができずに離婚し、その後、銀行から請求が来てしまった場合、どうしても支払うことができなければ、自己破産等の手続を取って対応することもあります。

最初から離婚を想定して家を買う人はいないと思いますが、連帯保証人・連帯債務者としてサインするからには、ご自身も最後まで支払いの責任を取らなければならないことをはっきりと認識していただきたいと思います。

日本では、このような大事なことを教わる場所がなく、いざ離婚となった時に慌てる方が非常に多いので、中学あるいは高校の授業で取り上げるべきでは?と感じております。

 

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離婚調停には弁護士を付けた方がいいですか?

弁護士を付けるメリットとは?

調停は、あくまでも話し合いに基づいて、お互いが合意できるポイントを探るというものです。裁判所という完全に中立な機関を間に入れることによって、当事者の納得が得られやすいという長所がありますが、裁判所が結論を決めるわけではありません。

これに対して、訴訟ないし審判になりますと、当事者が出した主張や証拠をもとに、裁判所の決定をもらうという手続になります。

このように、調停は、ご自身が納得しなければノーと言える手続であることから、弁護士を付けずにご自分でされる方もたくさんいらっしゃいます。

では、弁護士を付けるとどんなメリットがあるのでしょうか?

私は、主なメリットとしては3つあると思っています。

 

① 「調停でどんな条件を出すべきか」「相手の提案を飲むべきかどうか」というアドバイスをしてもらえる。

調停を弁護士に依頼すると、基本的に、弁護士とご本人が一緒に調停期日に出席します。

弁護士が実際に調停期日に同席していれば、「この条件なら応じた方がいい」「こんな逆提案をしましょう」などと、タイミングよく、しかも的確な助言をもらえます。

法律的に見て相当な条件なのかどうか、訴訟をした場合と比較してどうなのか、ということを弁護士に説明してもらった上で判断できるので、より、これでよかったと納得できる調停になると思います。

それが、弁護士を付ける最大のメリットです。

法律相談を利用して、その都度アドバイスをもらう方法もあります。

この方法ですと比較的費用をかけずに済むのですが、どうしてもその日の調停が終わった後の相談になってしまうので、調停の中で即答すべき場面では対応できません。また、弁護士が同席していればその場で確認できたような情報が確認できていなかったり、話が不正確に伝わってしまって的外れなアドバイスになったりという点も懸念されるところです。

回答を次回に引き延ばしているうちに相手の気が変わって好条件を逃してしまったということも、よくあります。

 

② 調停委員に自分の主張をうまく伝えるための手助けをしてもらえる。

通常、調停は2時間程度の枠の中で、調停委員が申立人と相手方それぞれのお話を個別に聞きます。そうすると、ざっくりと考えて、ご自分の話を聞いてもらえるのは約1時間だけ。限られた時間の中で、必要な情報をしっかり伝えなければなりません。

必要な情報を伝えなかったために、肝心なことには触れずに調停が終わってしまったという例もあります。

要点を押さえて話ができるかどうか不安だ、余計なことまで喋って不利にならないか心配、という方は、弁護士を依頼された方がよいと思います。

場合によっては書面を作成したり、証拠を提出したりしたほうがよいこともありますが、弁護士を依頼すれば、書面の作成や証拠の提出を弁護士に任せることができます。

 

③ 「調停調書」をチェックしてもらえる。

調停が成立した場合、最後に、合意した内容を「調停調書」という書類にまとめます。これは、離婚調停の結論が記載された、とても重要な書類です。

その内容をチェックしてもらえるのも、大きなメリットです。

 

過去に、調停条項で決めた内容を誤解していて、ご本人の意図とは違った取り決めになってしまったというご相談を受けたことがあります。

このような場合、調停調書の内容を覆すのはほぼ不可能です。

口頭で話したことは記録に残されませんし、話し合いの経過の中でいくら違うことを話していても、結論として調書に書かれたことがすべてです。

 

また、強制執行できない形で調停調書が作成されていて困っているとご相談に来られた方もあり、弁護士が付いていればこのようなことはなかったのでは?と思いました。強制執行というのは、相手が約束通りの支払いをしない場合に、相手の財産を強制的に差し押さえて回収する手続です。

もっとも、通常の養育費、財産分与、慰謝料の取り決めの場合は、強制執行できる形で調書が作成されるのが普通で、このケースは特殊な事例だったと言えます。

以上の3つのメリットの他に、相手方と直接の連絡を取りたくない場合には、弁護士が窓口になって連絡を行うこともできます。

調停で決めた養育費などを支払ってもらう時にも、間に弁護士を立てたほうがスムーズに回収できることも多いです。また、いつでも相談できる弁護士がいることで、精神的に落ち着いたという方もいらっしゃいます。


弁護士を依頼するデメリットは?


弁護士を付けることの唯一のデメリットは、「費用がかかる」ということでしょう。

ではいったいどのくらいかかるのでしょうか?

2008年のデータなのでちょっと古いですが、日本弁護士連合会が会員の弁護士を対象に行ったアンケートでは、離婚調停の着手金を20万円とする弁護士が45%、30万円とする弁護士が42%という結果になっています。

http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/attorneys_fee/data/guide.pdf

また、調停が成立した場合には報酬金が発生します。

上記のアンケートでは、依頼者が親権を取得し、200万円の慰謝料と月3万円の養育費を得たケースについて、報酬金を30万円とする弁護士が40%、20万円とする弁護士が30%という結果になっています。

当事務所の着手金・報酬についてはこちらをご覧ください。

http://www.keyaki-lo.com/expense/

 

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離婚調停はどんなところで、どんなふうに進められる?

調停委員を介しての話し合いとなります

離婚調停は、相手方と面と向かって話をするのではなく、直接的には調停委員に事情を聴いてもらい、調停室には当事者が交互に入室する形での話し合いとなります。

標準的な流れは次の通りです。

離婚調停では、男女それぞれ1名ずつの調停委員が担当となり、当事者からの話を聴きます。

調停の第1回目は、初めに申立人側のみが入室し、調停委員から申立てをした事情を詳しく聴かれます。30分程度を目処に相手方と交代です。

相手方も30分程度を目処に調停委員に申立てに対する意見や事情を説明します。

その次には再度申立人が入室。調停委員から、「相手方は離婚についてこのように考えています」「調停を進めるために、こんな点を明らかにしてほしい」などのお話があります。事案に応じ、次回までに準備する資料等の指示があることもあります。

その後、再び相手方が入室。調停委員が申立人側の意向を伝え、次回までに準備する資料等があればその指示をします。

だいたい、申立人と相手方が2回ずつ話を聞いてもらったところで期日終了、次回期日を決めて解散するということになる場合が多いですが、申立人が2回目に入室した段階で次回期日を決め、申立人が先に帰宅というケースもよくあります。

調停の第2回期日以降は、場合によって申立人が先に入室したり、相手方が先になったりいろいろです。
調停の持ち時間は意外と短い

時間的には1回2時間程度として設定されています。

この時間内で申立人と相手方双方の話を聴きますので、単純に考えると、持ち時間は、それぞれ1回の期日につき1時間程度ということになります。 調停では、待っている時間は非常に長く感じるのですが、いざ自分の番になると、あっという間に時間が経ってしまいます。 本論と関係のないことにこだわって長々と話をしていると、肝心な点にたどり着かないまま時間切れになってしまいます。

調停委員は、もちろん当事者と面識はありませんし、これまでの経緯をご存じないまったくの第三者です。 そういう方にこれまでの長い結婚生活のあれこれを説明しなければならないのですから、きちんと理解してもらえるように事実関係をよく整理しておく必要があります。

 

したがって、調停では、

調停で何を決めたいのかはっきりと意識すること、

どうしても相手方や調停委員に伝えたいポイントを絞っておくこと

をお勧めします。

必要に応じて、資料を準備したり、口頭で説明しにくいことについては書面化しておくと、分かりやすくなりますし、時間短縮にもなります。
もちろん、1回2時間という時間は目安で、ケースによってはもっと延びることもありますし、早く終わることもあります。

 

当事者同士が顔を合わせる機会は少ないですが…

申立人と相手方は待合室も別なので、基本的に当事者同士が顔を合わせる機会は少ないですが、廊下ですれ違う程度のニアミスはあり得ます。
相手方とバッタリ出くわした際に暴力その他のトラブルになる可能性がある…という方の場合は、事前に裁判所にその旨伝えておく必要があります。

裁判所の設備その他の事情にもよりますが、待合室を別の階にする、調停室を別室にする、呼び出し時間をずらず、調停終了後に先に帰してもらう、などの配慮をお願いしておくことができます。
また、調停が成立した場合には申立人・相手方が同席の上、調停条項の確認をするのが原則です。

裁判官、書記官、調停委員が立ち会いますので、二人きりになることはありませんが、どうしても同席が無理なときは、別々に調停条項の確認を行う場合もあります。

 

当事務所では、女性弁護士が離婚調停についてのご相談に応じています。

弁護士を依頼せずにご自分で調停を進めている方に、継続相談の形でアドバイスをすることもできますので、お気軽にお問い合わせください。

離婚調停にかかる期間は?

調停は1か月に1回程度のペース

調停を申し立てる方は、一刻も早く離婚したいとお考えのことと思いますが、通常、1回目の調停期日は、調停を申し立ててから約1か月後で、その後もだいたい1か月に1回ずつ期日が開かれます。  ただし、調停委員と当事者双方の都合を合わせて日程を決めるので、なかなか都合が合わずにかなり間が空くこともあります。

調停期日は、何回までで結論を出すという決まりはありませんので、「何か月で終わります」とはっきり言うことはできないのが実際のところです。

申し立てた側と、相手側との合意がまとまるか(調停成立)、あるいは、これ以上話し合っても結論は出ないという状況に至った時(調停不成立)まで、何度も調停を重ねます。

調停が不成立になってしまったら、訴訟を提起することになります。

改めて訴訟の手続きを取らない限り、現状のまま(=婚姻関係が続いたまま)となります。

 

調停の期間は平均的な方で半年くらい

過去に経験した例から言いますと、平均的なケースでは「調停が終了するまで半年」という感覚です。

平成25年の司法統計によりますと、婚姻関係事件(離婚だけではなく、婚姻費用分担事件などを含む)のうち、半年以内に終了する事件が全体の約74%を占めています。さらに、1年以内には95%以上の事件が終了していますので、ほとんどの方が1年以内には終わると言ってよいでしょう。

1~2回の調停で終わるのは、離婚すること自体は双方とも異論がなく、親権や金銭的な問題についても争いが少ないケースです。

 

長引くケースの特徴

調停が長引く要因はいろいろありますが、「相手が離婚に応じるかどうか態度をはっきりしない場合」と「財産分与で揉めている場合」には長くなる確率が高いようです。

 

まず、相手が態度をはっきりしない場合にどうして長引くのか。

離婚調停で決めなければならないことは、まず、離婚をするかどうか。

そこがはっきりしないと前に進めません。

相手が、明確に「離婚には絶対応じない」と言っていれば、すぐに調停不成立になる可能性が高いですが、あやふやなままだと、話がストップしてしまいます。

例えば、相手が、「次回までに離婚するかどうか考えたい」と言えば「それなら次回まで待ちましょう」ということになります。

数回期日を重ねた上で、やっと相手が離婚を決意したという場合は、その後に、では親権者をどちらにするか、養育費は、慰謝料は、財産分与は、年金分割は…というように、話し合いを進めていくことになるので、調停に長期間かかります。

 

次に、財産分与で揉めている場合に、どうして長引くのか。

まず、財産分与というのは、夫婦が結婚している間に協力して築き上げた財産をどんなふうに分けるか、という話です。

初めに、対象となる財産にどんなものがあるのかリストアップするのですが、どちらかが通帳を出し渋ったりすると、確定するまでに時間がかかります。

また、例えば不動産の場合ですと、「不動産をどちらかが取るのか、売却して金銭を分けるのか」「一方が不動産を取得する場合、不動産をいくらのものとして評価するか」という問題が出てきて、なかなか結論が出ないことがあります。

または、預貯金であっても、自分が結婚前に稼いだお金が混じっているという場合は、「結婚前に稼いだお金」と「結婚後に稼いだお金」を分けた上で、「結婚後に稼いだお金」の部分を夫婦で分けることになりますが、金額がはっきりしない場合はやっかいです。銀行に依頼して取引履歴を取り寄せたり、双方の認識をすりあわせたりしていると、時間がかかってしまうのです。

 

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自己破産した時に保有を認められる財産の範囲 その3

前回までの記事で、自己破産しても、99万円までの現金・普通預貯金であれば手元に残せる、というお話をしました。
そして、現金・預貯金以外の財産(代表的なものは保険や車)の場合は扱いが違うことを説明しました。

では、破産手続きの直前に、保険を解約して現金化した場合はどうなるのでしょうか?
自動車を売却した場合には?

これについては、滑り込みで現金化しても、現金・普通預貯金と同じ扱いにはなりません。

例えば、解約したら30万円の解約返戻金を受け取れる保険がある場合。
破産すると

①破産管財人を付けずに、30万円の全額を債権者に按分弁済するか、または、
②破産管財人を付けてもらって自由財産拡張の申立てをするか、
のどちらかになります。
破産管財人を付けますと、申立て費用が約20万円アップします。

これを回避するために、破産直前に解約して現金30万円に換え、「現金だから手元に残せるでしょ?」
と言っても、それは認められない、ということです。

ただし、誰が聞いてもやむを得ないと納得できる使途に使った場合にまで、30万円を按分弁済せよ、と言われるわけではありません。
破産申立費用に充てた場合や、入院費に使った場合などがこれに当たります。

どのような場合に、保険の解約返戻金等を使ってしまってもよいか、については、
その使途や金額、使った時期、その時の収入や支出の状況など、あらゆる事情を加味して判断されます。
かなり個別的な事情によって左右されますので、詳しくは弁護士にご相談ください。

なお、将来的にお金が必要になる、という理由で按分弁済を免除してもらうことはできません。
そのような希望がある場合は、破産管財人を付けて自由財産拡張申立てを行ったほうがよいと考えられます。

 

破産した場合の見通しについて不安をお持ちの方は、当事務所の法律相談をご利用ください。

法テラスを利用しての無料相談も可能ですし、当事務所独自の無料法律相談の機会も設けております。