法律基礎知識

交通事故に関する紛争について

加害者が複数いる場合の負担割合

交通事故に関する紛争について/法律基礎知識

例えば、Aさんの運転する車とBさんの運転する車が衝突して、そこに巻き込まれた歩行者Cさんがいたとします。

Cさんの立場からすると、AさんとBさんが共同して事故を起こしたことになり、これを「共同不法行為」と呼んでいます。

また、AさんとBさんの関係は「不真正連帯債務」と呼ばれていて、Cさんの立場から見ると、AさんとBさんのどちらに請求してもよい、という関係になります。

もちろん、二重取りはできませんので、Aさんから全額の支払いを受けた場合には、Bさんには請求はできなくなります。

 

ここで、Cさんから請求を受けたAさんが全額の支払いをしたときに、Bさんにはいったいいくらの請求ができるのか?という問題が発生します。

AさんからBさんへの請求権のことを「求償権」と呼びます。

求償権の金額を決めるには、まず、具体的な事故の状況に応じて過失割合を弾き出した上で、その割合に応じて全体の金額を割り振ります。

例えば、Aさんの過失が7割、Bさんの過失が3割で、損害が100万円だったとすれば、AさんはBさんに30万円の請求ができるというわけです。

 

この件に関連して、求償権の時効はいつまでか?ということが争われることがあります。

交通事故などの「不法行為」による損害賠償請求権の時効は3年と比較的短いのですが、これに合わせて時効が3年となるのか、それとも一般の債権と同じく10年になるのか、という問題です。

判例上は、求償権は、被害者が有する損害賠償請求権とは性格の違う権利で、当事者間の公平の観点から認められたものなので、不法行為の時効期間に関する規定は適用されない、と判断された事例が多いようです。

したがって、求償権の時効は10年と解釈されます。

 

つまり、被害者との間では3年が経過して時効が完成し、支払う必要性がなくなっても、他の加害者が支払いをしていた場合には、その後も求償権の行使を受ける可能性があります。

交通事故に限らず、他の加害者が支払ってくれたからいいや、と思って放置していたところ、何年も経ってから、突然、求償権の行使を受けて慌てふためくという事例も皆無ではありません。

交通事故の事例の他に、不貞行為の加害者同士の関係も共同不法行為に該当し、不真正連帯債務になるとされており、時効に関しても上記に述べた内容が該当すると考えられます。

このような事案が発生した場合には、被害者との間だけではなく、加害者同士においても、きちんと話し合って負担割合を決め、書面に残しておくことが重要です。

 

当事務所では、随時、さまざまな問題に関する法律相談を受け付けております。

ネットでの申し込みもできますので、お気軽にご利用ください。

 

堺けやき法律事務所 弁護士 深堀 知子

 

 

 

 

物損事故の損害賠償請求

交通事故に関する紛争について

例えば、Aさんが友人(Bさん)の車を借りて運転中、後ろから追突されたとします。

この場合、損害賠償の請求をすることができるのは、Aさん、Bさんのどちらでしょうか。

 

その答えは、人身と物損とで異なります。

事故により、Aさんが怪我をした場合、つまり、人身損害については、被害を受けたのはAさんですので、Aさんが加害者に対して損害を請求できます。

 

これに対して、物損に関しては、被害を受けたのは所有者であるBさんです。

車を借りていただけのAさんには、何ら被害は生じていません。

したがって、車の修理費や代車費用などの物損に関しては、請求できるのはBさんということになります。

自己所有の車を自分で運転していた場合には分けて考える必要はありませんが、他人所有の車を運転していた場合には、一つの事故でも、損害の種類によって請求権を持つ人物が異なりますので注意が必要です。

 

また、ローンを組んで車を購入した場合には、所有者がローン会社になっていることがあります。

このような場合、損害賠償請求権を持つのは原則としてローン会社になります。

自動車保険に加入していれば、保険会社が支払いを行なうため問題ないのですが、

保険に加入しておらず、自分で相手方に支払いをする場合には、車検証などを確認して、所有者が誰になっているか確認させてもらう必要があります。

 

当事務所では、自動車事故に関するご相談をお受けしております。

お気軽にお問い合わせください。

 

堺けやき法律事務所  弁護士 深堀 知子

 

 

自動車保険の弁護士費用特約について

交通事故に関する紛争について

皆さんの自動車保険には、弁護士費用特約が付いていますか?

これは、2000年に初めて登場したオプションだということですが、いまではすっかり一般的になりました。

当事務所でも、交通事故の件でご依頼を受ける場合、保険を使われる方が多数派になっています。

 

自動車保険についている弁護士保険特約の中には、自動車による事故限定のものと、自動車事故の他に日常生活上の事故で被害を受けた場合にも使えるものとがあります。

日常生活上の事故とは、例えば、自転車に衝突されてケガをした場合や、マンションの上階からの水漏れで被害を受けた場合などです。

自動車事故の場合には、保険会社と連絡を取る過程で、弁護士費用特約が使えることに気が付くケースが多いようですが、日常生活上の事故ですと、特約があることをすっかり忘れてしまっている場合もあります。

なんらかの事故で被害を受けて、弁護士に相談してみようかな、とお考えの方は、一度、ご加入の保険をご確認下さい。

なお、保険を使う場合、通常、保険会社の指定した弁護士でなければならないということはなく、ご自身で自由に弁護士を選定することができます。

 

以上の自動車保険の弁護士費用特約に対して、2013年より、弁護士費用をメインに据えた保険が発売されています。

日本では、このような保険を取り扱っているのは「プリベント少額短期保険株式会社」の「Mikata」という商品のみだということですが、今後、他の保険会社でも取り扱うようになるかもしれません。

 

「Mikata」では、自動車事故や日常生活上の事故に限定されず、離婚や相続、職場のトラブルなど、広く民事事件一般について、弁護士費用が支払われます。

対象となる法律事務所は一切限定されず、全国どこの法律事務所でもOKとのこと。

 

こういう保険に入っていたら万が一の時も安心ですが、保険料はいったいいくらなんでしょうね。

プリベントのホームページによれば、保険料は月額2,980円(変更される可能性もあり)。

年間約3.6万ですね。これを相当とみるか、高いとみるか…

なお、この保険は個人が対象で、法人は加入できません。また、個人であっても、事業活動上のトラブルの場合は法律相談料のみが支払われるとのことです。

 

以上の内容を含め、詳しい条件がプリベントのホームページに載っていましたので、加入を検討される方は、こちらをすみずみまでよく読んでみることをおススメします。