法律基礎知識

離婚について

離婚しても自宅に住み続けられますか?

法律基礎知識/財産分与/離婚について

離婚の際に生じる難しい問題のひとつが、結婚期間中に自宅を購入した場合の清算です。

 

誰が住宅を取得するのか決める

 

まず、離婚とともに別居するのが普通で、共同で自宅を使うことはできなくなりますので、

① 夫婦のどちらかが住宅を取得し、住み続ける

② 売却する

のどちらかを選択する必要があります。

 

①を選択した場合、通常は引き続き住む者が住宅を取得し、他方の当事者には金銭を渡す形で清算します。

具体的には、自宅の評価額から住宅ローンの残額を差し引き、通常はその2分の1に相当する現金を支払うことになります。住宅ローンの金額が評価額を越える場合(「オーバーローン」の場合)には、財産分与として渡すべき金銭はありません。

 

②の売却を選択した場合は、売却金を清算割合(基本的に2分の1ずつ)に応じて取得することになりますが、「オーバーローン」の場合は売却しても負債が残ります。

例えば、自宅を1000万円で売却できたが、その時点で残っている住宅ローンが1200万円だったとすれば、なお200万円のローンを支払わなければなりません。この場合、夫婦の双方が応分の負担をする必要があります。

 

支払能力がない場合の解決方法

 

いくら自宅に愛着があっても、特別の事情がないかぎり、ローンの支払能力がない場合には住宅を取得することはできません。

例えば、専業主婦で無収入の妻が自宅に住み続けたいと希望しても、住宅ローンを支払うあてがなければすぐに銀行に抵当権を実行されて住宅を失うことになってしまいます。かと言って、妻が住んでいる家のローンを、夫に負担させ続けるのも無理があります。

したがって、妻に支払能力がない場合は、夫に住宅を取得させるという結論にならざるを得ません。

 

ただ、ご本人の年齢・収入・健康状態や、養育するお子さんの状況によっては、すぐに転居できないこともあります。そこで、一定期間(例えば、子どもが学校を卒業するまでの間)建物を使用する権利を認めるという解決がされるケースもあります。

そういう形での解決をする場合には、期間や賃料の有無などの条件を巡ってトラブルが起きやすいので、きちんと書面を取り交わしておく必要があります。

建物の使用は、両当事者の意向や双方の経済状況等により、無償での使用が認められることもあれば、家賃を支払う形になることもあります。

 

また、実際には妻がローンを支払っているのに、銀行がローン及び不動産の名義変更を認めてくれない場合があります。

やむを得ず、夫名義のままで、妻がローンを支払い続けて自宅に住んでいるという方もいらっしゃいますが、そのままではローンを完済しても自分の財産にはならず、夫名義のままです。 少なくとも、夫との間で、ローン完済時には妻に名義変更する旨の約束をしておく必要がありますが、返済期間が何十年にも及ぶことが多く、夫と連絡が取れなくなって名義変更が困難になるケースもあります。 そのようなリスクがあっても、自宅に住み続ける必要があるのかどうかよく見極める必要があります。

 

当事務所では、女性弁護士が離婚に関する各種の相談に応じております。

ネットでのご相談申込みも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

離婚と同時に連帯保証を外してほしい

法律基礎知識/離婚について

住宅ローンを組むときに、夫が主債務者、妻が連帯保証人となっているケースが非常に多く見られます。あるいは、夫婦がともに連帯債務者になっていることもあります。

連帯保証と連帯債務は、法律的な意味は若干違うのですが、どちらも、夫にも妻にも住宅ローン全額の支払義務がある点では同じです。

 

連帯保証もしくは連帯債務の契約は、夫婦間だけでしているものではなく、銀行などの金融機関との間での約束。

離婚する、しないは銀行から見れば無関係で、連帯保証人もしくは連帯債務者の責任は、離婚してもまったく影響を受けません。

つまり、いったん連帯保証人・連帯債務者になってしまえば、離婚しても支払義務は残ります。

 

他の記事でも触れておりますが、離婚する際、通常は自宅を夫または妻のどちらかが取得することになります。

相当額の住宅ローンが残っていて、妻に支払能力がない場合には、普通、夫が住宅を取得して住宅ローンも支払うという結論になるのですが、このケースにおいて、妻が連帯保証人になっていることもよくあります。

このままの状態だと、何年か先に、夫が何らかの事情で住宅ローンの支払いをしなくなったときには、妻に請求が来るということになってしまいます。

妻としては、そのような状況を避けたいと思うのは当然であり、必ずと言っていいほど、「離婚したら連帯保証人から外れたい」という希望をお聞きします。

 

しかし、上記のとおり、離婚しても連帯保証人・連帯債務者の責任にはまったく影響しないので、「離婚したら当然に連帯保証人から外してもらえる」ということはありません。

連帯保証人・連帯債務者から外れるためには、銀行と交渉し、同意をもらう必要があります。

 

そのためには、代わりに連帯保証人・連帯債務者になってくれる人を探したり、担保に入れることができる不動産その他の財産を提供したりしなければなりません。

または、一定の額を繰上げ返済することで残債を減らし、連帯保証人から外れることが可能になることもあります。

新しい連帯保証人・連帯債務者になる方は、それなりの収入・資力があって、将来にわたって支払い能力がある方でないと銀行の審査を通りませんし、不動産等を担保に入れる場合でも、十分な価値があるものでないとダメです。

これが実際問題としては非常に難しく、なかなか連帯保証・連帯債務を外すことができないのが現状です。

 

連帯保証・連帯債務を外すことができずに離婚し、その後、銀行から請求が来てしまった場合、どうしても支払うことができなければ、自己破産等の手続を取って対応することもあります。

最初から離婚を想定して家を買う人はいないと思いますが、連帯保証人・連帯債務者としてサインするからには、ご自身も最後まで支払いの責任を取らなければならないことをはっきりと認識していただきたいと思います。

日本では、このような大事なことを教わる場所がなく、いざ離婚となった時に慌てる方が非常に多いので、中学あるいは高校の授業で取り上げるべきでは?と感じております。

 

当事務所では、離婚に際して起こるさまざまなトラブルについて、女性弁護士がご相談に応じております。

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離婚調停には弁護士を付けた方がいいですか?

法律基礎知識/離婚について

弁護士を付けるメリットとは?

調停は、あくまでも話し合いに基づいて、お互いが合意できるポイントを探るというものです。裁判所という完全に中立な機関を間に入れることによって、当事者の納得が得られやすいという長所がありますが、裁判所が結論を決めるわけではありません。

これに対して、訴訟ないし審判になりますと、当事者が出した主張や証拠をもとに、裁判所の決定をもらうという手続になります。

このように、調停は、ご自身が納得しなければノーと言える手続であることから、弁護士を付けずにご自分でされる方もたくさんいらっしゃいます。

では、弁護士を付けるとどんなメリットがあるのでしょうか?

私は、主なメリットとしては3つあると思っています。

 

① 「調停でどんな条件を出すべきか」「相手の提案を飲むべきかどうか」というアドバイスをしてもらえる。

調停を弁護士に依頼すると、基本的に、弁護士とご本人が一緒に調停期日に出席します。

弁護士が実際に調停期日に同席していれば、「この条件なら応じた方がいい」「こんな逆提案をしましょう」などと、タイミングよく、しかも的確な助言をもらえます。

法律的に見て相当な条件なのかどうか、訴訟をした場合と比較してどうなのか、ということを弁護士に説明してもらった上で判断できるので、より、これでよかったと納得できる調停になると思います。

それが、弁護士を付ける最大のメリットです。

法律相談を利用して、その都度アドバイスをもらう方法もあります。

この方法ですと比較的費用をかけずに済むのですが、どうしてもその日の調停が終わった後の相談になってしまうので、調停の中で即答すべき場面では対応できません。また、弁護士が同席していればその場で確認できたような情報が確認できていなかったり、話が不正確に伝わってしまって的外れなアドバイスになったりという点も懸念されるところです。

回答を次回に引き延ばしているうちに相手の気が変わって好条件を逃してしまったということも、よくあります。

 

② 調停委員に自分の主張をうまく伝えるための手助けをしてもらえる。

通常、調停は2時間程度の枠の中で、調停委員が申立人と相手方それぞれのお話を個別に聞きます。そうすると、ざっくりと考えて、ご自分の話を聞いてもらえるのは約1時間だけ。限られた時間の中で、必要な情報をしっかり伝えなければなりません。

必要な情報を伝えなかったために、肝心なことには触れずに調停が終わってしまったという例もあります。

要点を押さえて話ができるかどうか不安だ、余計なことまで喋って不利にならないか心配、という方は、弁護士を依頼された方がよいと思います。

場合によっては書面を作成したり、証拠を提出したりしたほうがよいこともありますが、弁護士を依頼すれば、書面の作成や証拠の提出を弁護士に任せることができます。

 

③ 「調停調書」をチェックしてもらえる。

調停が成立した場合、最後に、合意した内容を「調停調書」という書類にまとめます。これは、離婚調停の結論が記載された、とても重要な書類です。

その内容をチェックしてもらえるのも、大きなメリットです。

 

過去に、調停条項で決めた内容を誤解していて、ご本人の意図とは違った取り決めになってしまったというご相談を受けたことがあります。

このような場合、調停調書の内容を覆すのはほぼ不可能です。

口頭で話したことは記録に残されませんし、話し合いの経過の中でいくら違うことを話していても、結論として調書に書かれたことがすべてです。

 

また、強制執行できない形で調停調書が作成されていて困っているとご相談に来られた方もあり、弁護士が付いていればこのようなことはなかったのでは?と思いました。強制執行というのは、相手が約束通りの支払いをしない場合に、相手の財産を強制的に差し押さえて回収する手続です。

もっとも、通常の養育費、財産分与、慰謝料の取り決めの場合は、強制執行できる形で調書が作成されるのが普通で、このケースは特殊な事例だったと言えます。

以上の3つのメリットの他に、相手方と直接の連絡を取りたくない場合には、弁護士が窓口になって連絡を行うこともできます。

調停で決めた養育費などを支払ってもらう時にも、間に弁護士を立てたほうがスムーズに回収できることも多いです。また、いつでも相談できる弁護士がいることで、精神的に落ち着いたという方もいらっしゃいます。


弁護士を依頼するデメリットは?


弁護士を付けることの唯一のデメリットは、「費用がかかる」ということでしょう。

ではいったいどのくらいかかるのでしょうか?

2008年のデータなのでちょっと古いですが、日本弁護士連合会が会員の弁護士を対象に行ったアンケートでは、離婚調停の着手金を20万円とする弁護士が45%、30万円とする弁護士が42%という結果になっています。

http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/attorneys_fee/data/guide.pdf

また、調停が成立した場合には報酬金が発生します。

上記のアンケートでは、依頼者が親権を取得し、200万円の慰謝料と月3万円の養育費を得たケースについて、報酬金を30万円とする弁護士が40%、20万円とする弁護士が30%という結果になっています。

当事務所の着手金・報酬についてはこちらをご覧ください。

http://www.keyaki-lo.com/expense/

 

当事務所では、女性弁護士が離婚調停に関するご相談をお受けしております。

無料相談の機会も設けておりますので、お問い合わせフォームまたはお電話でお申し込みください。

 

離婚調停はどんなところで、どんなふうに進められる?

法律基礎知識/離婚について

調停委員を介しての話し合いとなります

離婚調停は、相手方と面と向かって話をするのではなく、直接的には調停委員に事情を聴いてもらい、調停室には当事者が交互に入室する形での話し合いとなります。

標準的な流れは次の通りです。

離婚調停では、男女それぞれ1名ずつの調停委員が担当となり、当事者からの話を聴きます。

調停の第1回目は、初めに申立人側のみが入室し、調停委員から申立てをした事情を詳しく聴かれます。30分程度を目処に相手方と交代です。

相手方も30分程度を目処に調停委員に申立てに対する意見や事情を説明します。

その次には再度申立人が入室。調停委員から、「相手方は離婚についてこのように考えています」「調停を進めるために、こんな点を明らかにしてほしい」などのお話があります。事案に応じ、次回までに準備する資料等の指示があることもあります。

その後、再び相手方が入室。調停委員が申立人側の意向を伝え、次回までに準備する資料等があればその指示をします。

だいたい、申立人と相手方が2回ずつ話を聞いてもらったところで期日終了、次回期日を決めて解散するということになる場合が多いですが、申立人が2回目に入室した段階で次回期日を決め、申立人が先に帰宅というケースもよくあります。

調停の第2回期日以降は、場合によって申立人が先に入室したり、相手方が先になったりいろいろです。
調停の持ち時間は意外と短い

時間的には1回2時間程度として設定されています。

この時間内で申立人と相手方双方の話を聴きますので、単純に考えると、持ち時間は、それぞれ1回の期日につき1時間程度ということになります。 調停では、待っている時間は非常に長く感じるのですが、いざ自分の番になると、あっという間に時間が経ってしまいます。 本論と関係のないことにこだわって長々と話をしていると、肝心な点にたどり着かないまま時間切れになってしまいます。

調停委員は、もちろん当事者と面識はありませんし、これまでの経緯をご存じないまったくの第三者です。 そういう方にこれまでの長い結婚生活のあれこれを説明しなければならないのですから、きちんと理解してもらえるように事実関係をよく整理しておく必要があります。

 

したがって、調停では、

調停で何を決めたいのかはっきりと意識すること、

どうしても相手方や調停委員に伝えたいポイントを絞っておくこと

をお勧めします。

必要に応じて、資料を準備したり、口頭で説明しにくいことについては書面化しておくと、分かりやすくなりますし、時間短縮にもなります。
もちろん、1回2時間という時間は目安で、ケースによってはもっと延びることもありますし、早く終わることもあります。

 

当事者同士が顔を合わせる機会は少ないですが…

申立人と相手方は待合室も別なので、基本的に当事者同士が顔を合わせる機会は少ないですが、廊下ですれ違う程度のニアミスはあり得ます。
相手方とバッタリ出くわした際に暴力その他のトラブルになる可能性がある…という方の場合は、事前に裁判所にその旨伝えておく必要があります。

裁判所の設備その他の事情にもよりますが、待合室を別の階にする、調停室を別室にする、呼び出し時間をずらず、調停終了後に先に帰してもらう、などの配慮をお願いしておくことができます。
また、調停が成立した場合には申立人・相手方が同席の上、調停条項の確認をするのが原則です。

裁判官、書記官、調停委員が立ち会いますので、二人きりになることはありませんが、どうしても同席が無理なときは、別々に調停条項の確認を行う場合もあります。

 

当事務所では、女性弁護士が離婚調停についてのご相談に応じています。

弁護士を依頼せずにご自分で調停を進めている方に、継続相談の形でアドバイスをすることもできますので、お気軽にお問い合わせください。

離婚調停にかかる期間は?

法律基礎知識/離婚について

調停は1か月に1回程度のペース

調停を申し立てる方は、一刻も早く離婚したいとお考えのことと思いますが、通常、1回目の調停期日は、調停を申し立ててから約1か月後で、その後もだいたい1か月に1回ずつ期日が開かれます。  ただし、調停委員と当事者双方の都合を合わせて日程を決めるので、なかなか都合が合わずにかなり間が空くこともあります。

調停期日は、何回までで結論を出すという決まりはありませんので、「何か月で終わります」とはっきり言うことはできないのが実際のところです。

申し立てた側と、相手側との合意がまとまるか(調停成立)、あるいは、これ以上話し合っても結論は出ないという状況に至った時(調停不成立)まで、何度も調停を重ねます。

調停が不成立になってしまったら、訴訟を提起することになります。

改めて訴訟の手続きを取らない限り、現状のまま(=婚姻関係が続いたまま)となります。

 

調停の期間は平均的な方で半年くらい

過去に経験した例から言いますと、平均的なケースでは「調停が終了するまで半年」という感覚です。

平成25年の司法統計によりますと、婚姻関係事件(離婚だけではなく、婚姻費用分担事件などを含む)のうち、半年以内に終了する事件が全体の約74%を占めています。さらに、1年以内には95%以上の事件が終了していますので、ほとんどの方が1年以内には終わると言ってよいでしょう。

1~2回の調停で終わるのは、離婚すること自体は双方とも異論がなく、親権や金銭的な問題についても争いが少ないケースです。

 

長引くケースの特徴

調停が長引く要因はいろいろありますが、「相手が離婚に応じるかどうか態度をはっきりしない場合」と「財産分与で揉めている場合」には長くなる確率が高いようです。

 

まず、相手が態度をはっきりしない場合にどうして長引くのか。

離婚調停で決めなければならないことは、まず、離婚をするかどうか。

そこがはっきりしないと前に進めません。

相手が、明確に「離婚には絶対応じない」と言っていれば、すぐに調停不成立になる可能性が高いですが、あやふやなままだと、話がストップしてしまいます。

例えば、相手が、「次回までに離婚するかどうか考えたい」と言えば「それなら次回まで待ちましょう」ということになります。

数回期日を重ねた上で、やっと相手が離婚を決意したという場合は、その後に、では親権者をどちらにするか、養育費は、慰謝料は、財産分与は、年金分割は…というように、話し合いを進めていくことになるので、調停に長期間かかります。

 

次に、財産分与で揉めている場合に、どうして長引くのか。

まず、財産分与というのは、夫婦が結婚している間に協力して築き上げた財産をどんなふうに分けるか、という話です。

初めに、対象となる財産にどんなものがあるのかリストアップするのですが、どちらかが通帳を出し渋ったりすると、確定するまでに時間がかかります。

また、例えば不動産の場合ですと、「不動産をどちらかが取るのか、売却して金銭を分けるのか」「一方が不動産を取得する場合、不動産をいくらのものとして評価するか」という問題が出てきて、なかなか結論が出ないことがあります。

または、預貯金であっても、自分が結婚前に稼いだお金が混じっているという場合は、「結婚前に稼いだお金」と「結婚後に稼いだお金」を分けた上で、「結婚後に稼いだお金」の部分を夫婦で分けることになりますが、金額がはっきりしない場合はやっかいです。銀行に依頼して取引履歴を取り寄せたり、双方の認識をすりあわせたりしていると、時間がかかってしまうのです。

 

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勝手に離婚届を出された場合~離婚無効確認

協議離婚

今日は、離婚するつもりがないのに、勝手に離婚届を出されてしまった場合の対応についてお話したいと思います。

離婚する意思がないのに離婚届が提出された場合、その離婚は無効です。

しかし、日本の役所は、直接の意思確認をすることなく、離婚届に必要事項が書かれていれば受け付けるシステムになっていますので、無効であっても形式上の要件が整っていれば、戸籍に「離婚」と記載されます。

後で気が付き、窓口で「無効なんです!」と訴えても、役所ではどうすることもできません。

 

それでは、どこでどのような手続を取ればいいのでしょうか。

 

調停を申し立てる

まずは、「離婚無効確認」の調停を申立てましょう。

調停は、相手方の住所地のある家庭裁判所で申し立てます。

調停というのは、裁判所が間に入って、当事者同士が話し合いで問題を解決する制度です。

この場合は「勝手に離婚届を出されているので、離婚が無効であることを確認してほしい」という調停を申し立てることになります。

相手方が、「確かに勝手に出した」と認めれば問題は解決です。

ケースによっては、離婚無効確認の調停の中で、「こういう条件が整えば離婚してもよい」という話になり、離婚の条件を協議することもあります。

 

調停が不成立の場合は訴訟へ

調停の申立てに対し、相手方が「いや、確かにあなたは離婚に同意したではないか。」と言って譲らず、話が平行線である場合には、調停は不成立となります。

その場合には、調停手続きは終了となりますので、離婚無効を求める側は、改めて、家庭裁判所に対し、離婚無効確認の訴訟を提起することになります。

訴訟では、裁判官が証拠に基づき、離婚無効を認める・認めないの判断を下します。 離婚無効を認容する判決を得れば、相手方の同意・不同意にはかかわらず、強制的に戸籍を訂正することができるようになります。

しかし、離婚無効の調停から訴訟までの手続を行うのは時間的にも非常に長く、負担は決して軽くありません。

特に、調停はともかく、訴訟に慣れていない方が自分で訴訟手続を行うのは大変ですので、通常は弁護士に依頼することになり、費用的な負担も出てきます。

このような事態を避けるために、離婚届の不受理申出の制度がありますので、離婚届を勝手に出される危険がある場合には活用してください。

不受理届についてはこちらの記事↓もご覧ください。

勝手に離婚届を提出されないようにするには | 堺けやき法律事務所.

 

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財産分与の割合は2分の1と決まっているのか?

法律基礎知識/財産分与

財産分与の対象となる財産とは?

離婚に際しての財産分けのことを「財産分与」といいます。

財産分与の対象となるのは、結婚期間中に夫婦の協力によって得た財産。
たとえば、結婚期間中のお給料から貯めた預貯金、結婚後に購入した不動産などがこれに当たります。

これに対して、夫婦のどちらかが、結婚前から持っていた財産や、相続した財産などは、
夫婦が協力して得た財産ではありませんので、財産分与の対象にはなりません。
たとえば、妻が結婚前に働いて積み立てた貯金は、財産分与の対象ではなく、離婚しても、夫に分与する必要はないのです。
これを「固有財産」と呼んでいます。

ただし、預貯金や現金の場合、結婚後の財産と混じってしまい、固有財産かどうかの見分けがつかなくなることがあります。
結婚前の預貯金がそのままの通帳に残っていればいいのですが、一旦引き出してしまうと固有財産と認められにくくなります。

分与割合は2分の1?

民法の改正案では、財産分与の割合を2分の1ずつとするという「2分の1ルール」が取り入れられていますが、現在、まだ法律の改正には至っておらず、法律上は分与の割合に関する定めはありません。
しかし、実際上は、やはり夫と妻が2分の1ずつ取得するケースが圧倒的に多いように思います。

なお、夫側から、「専業主婦の妻を養っていたのに、さらに財産も半分取られるのですか?」と聞かれることがあるのですが、会社員の夫、専業主婦の妻のカップルで、妻が通常の家事労働を行っていれば、分与割合は2分の1と考えるのが普通です。

分与の割合に関しては、大きく分けて、次の3つの考え方があります。

● 何があっても2分の1ずつ、とする考え方
● 実際に財産形成にどの程度の貢献をしたのかを見て割合を決める考え方
● 基本的には2分の1ずつにするが、実際の貢献度が2分の1ずつではないことが証明された場合には、実際の貢献度に基づいた割合にするという考え方

一般的なのは一番最後の考え方です。

たとえば、夫婦のどちらかが、特に専門的な能力を有していたために高収入を得ていた場合、あるいは、専業主婦であった妻が家事労働を全く行っていなかった場合などに関しては、分与割合が2分の1にならない可能性があります。

注意しなければならないのは、現在の調停や審判では、「基本的に2分の1ずつ」という考え方が根強いので、積極的に、「寄与の程度が違いますよ!」ということを主張し、裏付けとなる証拠を提示していかないと、2分の1を前提として話が進むということです。

ご自身の寄与割合が明らかに2分の1を越えていると思われる方は、この点を意識する必要があります。
この部分が争点となる場合には、弁護士に相談または委任することを強くお勧めいたします。

財産分与の対象になる財産、ならない財産

財産分与

夫婦が所有している財産の中には、離婚の際に財産分与の対象になるものとならないものがあります。

 

財産分与の対象となるもの

夫婦が協力して築き上げた財産のすべてが財産分与の対象となります。

例えば、住宅、預貯金、株式、保険、ゴルフクラブ等の会員権などです。

日常生活で使用する家具や電化製品などは、中古品になると経済的価値はほとんどありませんので、実際上、財産分与として取り上げられることはほとんどありません。

退職金や退職年金については、既に支給済みの場合は財産分与の対象になります。

まだ退職していなくても、近い将来(2~3年程度)に退職が予定されており、ほぼ確実に退職金が得られるという場合には財産分与の対象となることがあります。

これに対し、退職時期が未定でかなり先になりそうな場合には、退職金が支給されるかどうか自体が不確定ですので、財産分与で考慮されることはありません。

 

 

財産分与の対象にならないもの

結婚前からそれぞれが所有していた財産は財産分与の対象ではありません。財産分与の対象にならない財産を「特有財産」と呼びます。

結婚前に貯めていた預貯金はもちろん特有財産になりますし、嫁入り道具として持参したものや結婚指輪も妻の特有財産と考えられています。

また、結婚期間中に取得したものであっても、親から相続した財産は、夫婦が協力して得たものではありませんので財産分与とは無関係です。

結婚期間中に、夫婦のどちらかが単独で使用することを前提に購入した装飾品や身の回り品は、通常、特有財産とされます。

 

相手名義の預貯金等が分からない場合

結婚期間中、夫または妻に金銭管理を任せきりにしていて、どこにどれだけの預貯金があるのか全く分からないという方が時々いらっしゃいます。

しかし、財産分与を請求する場合には、「〇〇銀行のこの支店に預金があります」というように、はっきりと対象を特定する必要があります。

現在の日本の制度では、何も手がかりがない状態から相手方名義の預貯金を調査することは不可能です。裁判所に調停や審判を申立てたり、弁護士を依頼されたりしても、それは同じことで、いくら「預金が他にもあるはずだ」と主張しても、こちらでその証拠をつかむことができなければ財産分与を受けることはできません。

結婚生活がいよいよ破綻し、別居してしまってから相手の財産を調べることは非常に困難ですので、結婚生活が続いている間に、相手方の財産を把握しておくことをお勧めいたします。

 

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財産分与とはどのようなもの?

法律基礎知識/財産分与

 

慰謝料と財産分与の関係

 

離婚をする際に行われる財産のやりとりには大きく分けて「財産分与」と「慰謝料」があります。

財産分与とは、主に、結婚している間に夫婦が共同で形成した財産を分けるという趣旨の財産給付です。

慰謝料とは、離婚をもたらした責任のある夫または妻に対して請求できる損害賠償です。

このように、財産分与と慰謝料は法律的な性格は異なるのですが、民法上、財産分与については「家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。」(民法768条3項)という定めがあります。

つまり、財産分与を決める際に、「一切の事情」として慰謝料的な要素、さらには扶養的な要素が加味されることがあります。

 

清算目的での財産分与

もっとも一般的に行われているのが、夫婦共有財産を分けるという清算目的での財産分与です。

この場合、夫婦共有財産とは、名義を問わず、婚姻期間中に夫婦で得た財産を指します。実際に外で働いて収入を得ているのが夫のみであっても、それは妻の支えがあってこそですので、婚姻期間中の給与収入は夫婦共有財産となります。

不動産などの高額な財産は夫の名義になっていることが多いのですが、名義が夫であっても財産分与の対象になります。

 

慰謝料的な要素を加味した財産分与

上記のとおり、財産分与と慰謝料は別々の法的根拠に基づく請求権ですが、実際の判断では財産分与に慰謝料的な要素を含ませることが可能です。しかし、常に、慰謝料も含んだ形で判断されるわけではなく、純粋に財産のみの分与をすることもあります。

仮に、財産分与に慰謝料が含まれている場合には、別途、慰謝料を請求することはできなくなります。

この点に関連して注意すべきなのは、協議離婚や調停離婚で財産分与の合意をする際に、「慰謝料を含むかどうか」を明確にしておくべきであるということです。

この部分が曖昧だと、「こちらとしては慰謝料も全部含んだ金額で決着したつもりなのに、後日、慰謝料をさらに請求された」などということになりかねません。

 

扶養的な要素を加味した財産分与

財産分与の一態様として、離婚後の生活を保障する目的で、月々一定額を支払う形の財産分与が行われることがあります。

夫婦の一方が高齢、病気等の理由で離婚後の生活が困難な場合などに認められた例がありますが、事例としては非常に少ないです。

 

今回は離婚に際しての財産分与についてご説明しました。

当事務所では、毎週水曜日の午後に無料法律相談を実施しております。ご希望の方はお電話もしくはホームページからお申し込みください。

 

 

 

 

離婚した後に慰謝料を請求する場合の注意点

慰謝料

慰謝料は、離婚と同時に請求することが圧倒的に多いですが、離婚した後に請求することも可能です。

離婚した後に慰謝料の請求をしようと思い立った方は、以下の点にご注意ください。

 

慰謝料には時効があります

慰謝料請求権は、民法上、不法行為に基づく損害賠償請求権であり、3年の消滅時効にかかります。

したがって、離婚した日から3年を経過すると時効になってしまいます。

 

離婚に際して合意をした場合には内容に注意

公正証書、調停もしくは当事者間で取り交わした書面の中に、「慰謝料は請求しない」という文面が入っている場合には、当然ですが慰謝料の請求はできません。

また、「清算条項」と言って、例えば、

「両当事者は、本和解書に定めたものの他は、本件離婚に関し、何らの債権債務がないことを相互に確認する。」

というような条項が入ることがあります。

「何らの債権債務がない」=慰謝料請求権もない、という意味になりますので、このような合意をしてしまうと慰謝料の請求はできません。

離婚調停などで、今は請求をしないが、将来的に慰謝料の請求をしようと考えている場合は、清算条項を外してもらう必要があります。この点は誤解される方が多いので、十分に注意してください。

 

離婚と同時に話し合った方が支払いを受けやすい

離婚の話し合いを終えてから、改めて慰謝料の請求を行うことは法律上は可能ですが、実際には困難さが格段に上がります。

一度離婚が成立してしまうと、慰謝料を支払おうというモチベーションが下がるのが一般的で、任意に支払ってもらうことが難しくなります。金額も下がる傾向があります。

請求する側にしても、離婚の話し合いを終えた後に、さらに慰謝料の請求を別建てで行うとなるといつまでも紛争が続き、精神的にも辛くなると思います。

慰謝料を支払う側が離婚を強く望んでいる場合には、慰謝料を支払うから離婚に応じてほしいという心情になることが多く、比較的金額も高めになりますので、多少話し合いの時間がかかっても、離婚と同時進行で請求することをお勧めいたします。

 

当事務所では、女性弁護士が離婚に関連する慰謝料請求等のご相談に応じております。

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