法律基礎知識

「監護権」は私、「親権」は相手と分けることはできる??

親権の中身

親権には、法律的に言いますと、大きく分けて「身上監護権」と「財産管理権」の二つが含まれると言われています。

 

まず、「身上監護権」。

これは、平たく言えば「子どもを育てる権利」のことです。

子どもに教育や医療などを受けさせ、子どもの住居を決めることができます。

また、子どもがアルバイトなどをする場合の許可を与えるのも親権者の役割です。

 

そして「財産管理権」とはその字のごとく、子どもの財産を管理する権利です。

子どもに財産なんてないから関係ない、という方もいるでしょうが、 例えば、万が一交通事故などに遭った場合、損害賠償金を請求することができるのは親権者に限られます。 また、子ども名義で銀行口座を開設することができるのも親権者のみです。

ちなみに、大阪府では高校の授業料無償化が実施されていますが、その条件の一つに、 「親権者全員が大阪府内に居住していること」 というものがあります。
例えば、東京在住の父が親権者になっているけれど、実際には大阪府内で母と居住している場合。 こんな場合には無償化の恩恵が受けられないことになってしまいます。

個人的には、こういうケースを何とか救済できないかと思いますが、親権の有無がこんなところにも響いてくるのです。

 

監護権の中身

監護権というのは、ザックリと言えば実際に子どもを養育する権利のことで、通常は親権者=監護権者となります。

しかし、民法上、親権者とは別に監護者を決めることができるという規定があり、親権者が父(母)、監護者が母(父)というように分けることがあります。

一般的には、監護者を決めた場合には、それは、上で説明した親権の内容のうちの、「身上監護権」を渡したことになる、と理解されています。

 

離婚の際、親権で揉めた挙句、妥協案として親権者と監護権者を分けるという形で決着しようとすることがあります。

しかし、上記の高校授業料の件に見られるように、実際の監護者が親権を持っていないといろいろな手続きをする上で不都合なことも多いので、やむを得ない理由がなければ親権者と監護権者を分けるべきではないと思います。

例えば、最近は高校の修学旅行が海外、という学校も珍しくありませんが、パスポートの申請は親権者に限られています。奨学金の申請も親権者の同意が必要です。 こんな場合はいちいち親権者に連絡を取って手続をしてもらう必要があります。

離婚後も元夫婦が密に連絡を取り合っていれば問題ないのですが、実際にはなかなか難しいことではないでしょうか。

 

また、戸籍謄本を取りますと「親権者」は明記されており一目瞭然ですが、監護権者に関しての記載はされません。

ただ単に子どもと一緒に暮らしているという場合、監護権者として定めたのかどうかがあいまいになり、のちに、親権者から「子どもを引き渡せ」と要求されるなどのトラブルが発生する可能性があります。

はっきりと監護権者として定めていれば、特に理由もないのに子どもの引き渡しを要求されるという心配はなくなります。

したがって、何らかの事情で監護権者を別に決める場合には、その旨の書面を残しておくことが必須です。

 

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2016/11/15

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