法律基礎知識

不貞行為を理由とした慰謝料の「相場」

離婚の原因が相手方の不貞行為にある場合、相手方に慰謝料を請求することができます。

一般的に、不貞行為の慰謝料の「相場」としては、「数十万から300万円の間」の金額を挙げる例が多いようです。

もちろん、不貞行為の内容によって金額は異なりますので、一概に比べることはできないと思いますが、現在では、不貞行為の慰謝料としては200万円程度が平均的な金額ではないでしょうか。

私は今年で弁護士登録20年目となりますが、弁護士になったころよりも慰謝料の金額が下がってきているという印象を持っていて、同じようなことが書かれた文献を目にしたこともあります。 以前は、平均300万円というイメージでした。

明治時代には、不貞行為は姦通罪という犯罪でした。

それが戦後に廃止され、民事上の不法行為に該当するにとどまることとなりましたが、さらに時代が流れ、不法行為としての違法性の程度も徐々に薄くなってきているのではないかと感じています。

家族の形が多様化し、「結婚」の意味が変化してきていることの一つの表れなのかもしれません。

諸外国では、そもそも不貞行為は不法行為には該当せず、浮気をされても慰謝料は発生しないと考えられている国もあります。

 

慰謝料を決める要素

不貞行為の慰謝料は、例えば交通事故の場合のような基準は存在せず、「総合的に判断して」決められる形となっています。

そのため、裁判まで持ち込んだ時に認定される金額を予想することは難しいのですが、過去の事例から、次のような項目が慰謝料の算定要素になると言われています。

 

① 不貞行為の期間、態様、程度

期間が長ければ長いほど、頻度が多ければ多いほど、増額する方向に傾きます。

不貞の具体的な内容も問題となります。

 

② 結婚期間、それまでの結婚生活の状況

結婚期間が長い場合、長年築いてきた結婚生活が壊されたとして増額事由になることがあります。

また、不貞行為以前の結婚生活の状況も、慰謝料を決める大きな要素です。

従来の結婚生活がきわめて良好であったのに不貞行為によって破綻した場合、不貞行為が結婚生活に与えた影響は甚大で、慰謝料の金額は大きくなる傾向があります。

これに対して、元々夫婦関係がうまく行っていなかった場合、特にその原因が慰謝料を請求する側にあった場合には、慰謝料は減額されるでしょう。

なお、婚姻関係が「うまく行っていない」という状況よりさらに進んで、「破綻した」と評価される状態に達していた場合、破綻後の不貞行為は、そもそも不法行為に該当せず、慰謝料は発生しないと考えられています。

 

③ 不貞を主導したのが誰か

不貞を主導したのが配偶者・不貞の相手方のいずれであっても金額には影響しないとする考え方もありますが、積極的に不貞を働きかけたかどうかを算定要素とする判例もあります。

 

④ その他

その他、不貞行為から発覚後の事情に至るまで、いろいろな事情が考慮されます。

例えば、不貞が発覚した際に嘘をつく、別れると約束した後にも関係を継続していた等の事情がある場合、謝罪もせず開き直っている場合などは、より悪質だと評価され、増額の要因になります。

夫婦間にお子さんがいて、お子さんが親の不貞を知って苦しんでいる場合、それを慰謝料の増額要素と捉える例もあります。

また、不貞行為により妊娠・出産という結果が生じた場合は、それ自体の精神的苦痛の度合いが高いことはもちろん、戸籍にも記載が残り、配偶者が子どもの養育義務を負うことにより被る影響が大きいので、慰謝料の増額事由に当たります。

 

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2016/11/15

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