判決と和解の違いについて
訴訟が進んで、概ね主張と証拠が揃った段階になりますと、必ずと言っていいほど和解の場が設けられます。
当事者の方にとっては、和解をするか、判決をもらうかの選択を迫られることになります。
和解案を受けた方が良いのかどうか悩む方も多いと思いますが、一番大きな判断のポイントは、「判決になったらどういう結果になるだろうか?」ということです。
訴訟に提出された主張、それを裏付ける証拠を検討して、勝つ見込みがあるのかどうか。
和解をしなくても勝てる可能性が高いのであれば、無理に和解をしなくてもいい、という方向に傾きます。負けそうな気配が濃厚であれば、少額の和解案であっても受け入れた方がいいでしょう。
最近では、裁判官がある程度踏み込んだ心証開示を行なうことが多く、判決の見通しを付けやすいケースが増えていると感じます。
裁判官の心証開示がないケースというのは、かなり微妙で勝敗の見通しが付きにくいことが多いです。そのような場合は、最後まで結果が分かりませんので、敗訴のリスクを避けるために和解を選択するということもあり得ます。
しかし、実際の訴訟には、これとは全く別の視点があります。
「勝訴したとしても、それを回収できるだろうか?」ということです。
相手方に資力があることが分かっている場合はいいのですが、どんな財産を持っているか不明な場合、あるいは資力がない場合は、たとえ全面勝訴したとしても実際に回収することができないことが多いです。
誤解されることが多いのですが、裁判所は判決を出すだけで、相手方から取り立ててお金を持ってきてくれるわけではありません。
回収するためには、別途、自分で差押えができる財産を探して来て、これを押さえて下さい、という手続をしなければなりません。
したがって、勝訴してもその内容を実現できないという事例が頻発するわけです。
なお、強制執行が可能になるという点においては、判決と和解に違いはありません。
和解の場合は、相手方が自分で納得して支払いを約束するので、支払が行われる見込みが高いと言われています。裁判所という公的な場で行なう約束ですので、心理的な強制力も大きいのでしょう。
実際、私が関与した事案でも、和解後に約束を反故にされたというケースはほとんどありません。
長期にわたる支払いの場合は、途中で支払いが止まってしまう例が散見されますが、きちんと支払いを終える例の方が多いです。
さらに、もう一つ、和解によって早期に解決ができることもメリットの一つです。
「和解」は終局的な解決であり、それ以上長引くことはありませんが、判決に対しては「控訴」をすることができます。
控訴されると、さらに控訴審の対応に時間と費用を掛けなければならず、負担が大きくなります。
なお、通常、弁護士費用は審級ごとに発生しますので、引き続いて控訴審を依頼する場合には別途着手金をお支払いいただく必要があります。
和解の場合は、判決では決めることのできない約束ごとを含める余地がある、という利点もあります。
和解をすることによって、感情的な対立がいくぶんでも和らげられたり、ご自身の中で気持ちの整理が付いたりといった精神的な役割も否定できません。
しかし、和解は強制されるものではありませんし、無理に和解をして逆に納得できない思いを引きずってしまうこともあります。
当事務所では、正しく状況を理解していただき、納得のいくご判断をしていただけるよう、依頼者の皆様をサポートしていきたいと思っております。
堺けやき法律事務所 弁護士 深堀 知子
2017/06/08