労働審判手続きの流れ
通常の裁判の第1回期日は、形式的な手続のみが行われ、ものの5分もかからず終了することがほとんどです。
実質的な審理は2回目以降になるのが普通です。
しかし、労働審判では進め方が全く異なります。
労働審判は、3回以内の期日で終了することが予定されているので、第1回から非常に密度の濃いやり取りがなされます。
むしろ、労働審判が成功するかどうかは1回目の期日にかかっていると言えます。
第1回目の期日では、当事者に対する審尋が行われ、その後に調停を試みるというスタイルがほとんどです。
審尋は、最初に申立人本人、次に相手方本人という順番で行われることが多く、会社が当事者の場合には、事情を一番よく知っている者が対象となります。
通常の裁判の尋問は、双方の代理人弁護士がまず質問をして、最後に裁判官から質問がある、というスタイルですが、労働審判では、裁判所(労働審判委員会)から当事者に対してダイレクトに質問があります。
なお、労働審判委員会は、裁判官1名、民間から選ばれた労働審判員2名の3名で構成されており、労働審判員は使用者側と労働者側からそれぞれ1名となっています。
この審尋の結果で、ほぼ、裁判所側の心証が決まってしまいますので、非常に大切な手続となります。
質問される内容は、申立書・答弁書その他の書類を読んで、労働審判委員会が疑問に思った点ということになりますが、質問の内容は事前には分かりません。
どんな質問をされても答えられるように準備しておかなければなりませんし、必要以上に緊張せず、分かりやすい言葉で話せるように練習しておく必要もあります。
審尋の後の調停では、裁判所から具体的な調停案が示されます。
つまり、「裁判所としては、この案件はこういう事実関係と考える。ついては、こんな結論で歩み寄ってはどうか?」というお話があります。
通常は、お話をいったん持ち帰って2回目の期日で回答しますが、その場で双方納得して調停が成立することもあります。
もし、当事者が調停に納得せず、審判がなされたとしても、調停案に沿った形での決定になることがほとんどです。
2017/01/12