法律基礎知識

改正消費者契約法が施行されました

このたび、改正された消費者契約法が施行され、契約を取り消せる範囲が広がるなど、さらに強力な消費者保護を目指した内容となりました。

その背景としては、高齢者が不要なものを次々と買わされたり、ウソの事情を信じ込んで契約したりするような被害が発生しているという状況があります。

今回は、大量に商品を購入した場合の取消しと、虚偽の事由を告げられて購入した場合の取消しについて説明します。

 

● 大量の商品購入の取消し

その消費者にとって「通常の分量を著しく超える(=過量)」ものが取消しの対象となります。

 

過量かどうかは、単に、購入した数だけではなく、購入した物の内容や価格などの取引条件も加味して考えます。

同じ量を買ったとしても、保存食品であれば過量に当たらないものが、生鮮食品の場合には過量に当たることもあります。(期限までに消費しないと価値がなくなるため。)

 

また、それぞれの消費者を基準として考えますので、「過量」に当たるかどうかは、その人のふだんの生活状況によって異なった判断がなされます。

例えば、1人暮らしでふだん外出しない人が、高価な着物を10着も買ったとすれば、それは「通常の分量を著しく超える」ということになります。

しかし、同じような買い物をしたとしても、例えば、その人が芸能人で頻繁に着物を着て外出している人であれば取消しの対象にはなりません。

 

簡単に言いますと、常識的に考えて、「この人が、この物をこんなに買って使い切れるはずがない」と判断される場合には「過量」に当たる可能性が高いです。

ただし、取消しの対象となるのは、事業者から消費者に勧誘をした場合に限られます。自分で勝手に大量買いをした場合には取り消せませんのでご注意ください。

高齢者の方などで、判断能力が衰えて不要なものを大量に買ってしまうおそれがある場合には、成年後見制度のご利用をご検討ください。

 

●虚偽の事由を告げられて購入させられた場合の取消し

従来の消費者契約法では、買ったもの自体についてウソを言われた場合には取消しができましたが、買ったものに関係しないウソに関しては、取消しの対象外となっていました。

例を挙げますと、「騒音が全く出ない掃除機です」と言われて購入したものを実際に使ってみたらかなりうるさかった、という場合には取消しができましたが、「この掃除機を使っていると発火の危険があって危ないから買い換えた方がいい」と言われたが、実際には危険性がなかった場合には、取消しはできませんでした。

 

新しい消費者契約法では、消費者が「発火の危険がある」などと騙されて要らない商品を購入した場合でも、取消しが可能となり、取り消せる範囲が広がりました。

 

消費者契約法により契約を取り消した場合には、

消費者は、購入金額の全額の返還を受けることができます。

仮に、一部を消費してしまった場合でもそれは変わらず、手元に残っているものを業者に返せばよいことになっています。

手元に残っていない場合(破棄した場合など)は、返還する必要はありませんが、転売などをした場合には手元に残った利益分を業者に返還しなければなりません。

 

堺けやき法律事務所  弁護士 深堀 知子

2017/06/14

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