親権は何を基準に決めるもの?
今回は、親権を決める際にどんな事情が考慮されるか、ということについてお話したいと思います。
最終的には、さまざまな事情を総合判断する、ということになるのですが、いくつかの原則があります。
子どもの意思
まず、子どもが15歳以上の場合は、子どもの意思を聴くというルールがあります。これは、家事審判規則の規定に基づくもので、「子が満15歳以上であるときは、家庭裁判所は、親権者指定変更の審判をする前に、その子の陳述を聞かなければならない。」とされています。
もちろん、子どもの希望だけですべてが決まるわけではなく、そのほかの事情も考慮されますが、子どもの意思にはかなりのウエイトが置かれます。
そして、15歳以下であっても、子どもが自分の意見を言える年齢に達していれば、裁判所が何らかの形で子どもの意見を聴くことがほとんどです。具体的には、小学校3~4年生以上になれば、子どもの意見が調停や審判、訴訟手続きに反映されているのではないかと思います。
現状の尊重
親権に対するひとつの考え方として、「現在の状態が安定していて養育環境に問題がないなら、それを尊重しよう」というものがあり、過去に、このような考え方に基づいて親権を判断した裁判例も多くあります。
この考え方は、例えば、母親が子どもを連れて別居しているような場合、母子間での結びつきがすでに形成されているのに、あえて母子を引き離して子どもを不安定にするのは望ましくないという配慮に基づくものです。
兄弟姉妹は一緒に
兄弟姉妹がいる場合、基本的には引き離さず、同じ環境の中で一緒に養育するのが望ましいと考えられています。もっとも、必ず兄弟姉妹は同じ親権者にしなければならないというわけではなく、何らかの事情がある場合(子どもの意見が食い違う場合や、現に分かれて育てられている場合など)は、親権者が別々になることもあります。
母性優先
特に小さい子どもの場合には母親の役割が大きいことを理由に、乳幼児では基本的に親権者を母とすべき、とする考え方があります。
もちろん、母親が母親としての役割を果たしておらず、父親(あるいは祖母など)が母親代わりの役割を果たしている場合もありますので、必ず母親が親権者になるとは言えません。
以上、4つの原則についてお話しましたが、この他に、親権者を決める際には、
※ 子育ての環境(住居や同居者など)
※ 仕事等との兼ね合いで時間的に養育が可能なのかどうか
※ 親権者が心身ともに健康かどうか
※ 養育をサポートしてくれる人がいるかどうか
※ 他方の親との面会を上手にサポートできるか
など、さまざまな事情が考慮されます。
よく、女性の相談者の方から、「私は夫より収入や資産が少ないので親権を取れないのでは?」というご質問がありますが、収入や資産などの経済的な条件は、実はそれほど重要なファクターではありません。 経済力が劣っていても、養育費の支払いを含めて、子どもの養育に必要な生活を維持できるのであれば、親権者になることは可能です。
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2016/11/15