証拠の重要性について
民事事件では、双方の言い分が180度違うことが珍しくありません。
例えば、事故の瞬間、信号が何色だったかで争われるケースは、皆さんが想像するより遥かに多いです。
故意に噓を言っている場合もありますが、思い込みや記憶違いもあります。
では、そのような場合、どうやってどちらが正しいのか見分けるのでしょうか。
【1】物的な証拠
一番価値があるのは、誰が見ても動かせない、物的・客観的な証拠です。
上の例であれば、ドライブレコーダーの画像があれば、ほぼ疑いの余地はありません。
契約上のトラブルのケースでは、契約書などの書面がモノを言います。
【2】人的な証拠
証拠として「証言」が用いられることもあります。
上の例で、物的な証拠がなく、たまたま通りかかった第三者が信号の色を証言してくれたとすれば、その証言に基づいて事実が認められるでしょう。
実際のところ、人間の認識や記憶というのは当てにならないところがあり、物的な証拠ほど正確ではありません。
しかし、裁判では、「裁判に出てきた証拠だけを元に、できる範囲での事実認定をする」というのが基本であり、第三者が赤と証言すれば赤という認定になる可能性が非常に高いです。
なぜなら、裁判の結果がどちらに転んでも、第三者にとっては得にも損にもなりませんので、ウソをつく理由がない、と考えられるからです。
では、第三者が2人いて、双方の証言が食い違っていたらどうなるでしょうか?
その場合は、「どちらの証言がより信用できるか?」という話になります。
信用性の判断は、供述の態度も含めた総合的なものになりますが、主なポイントを挙げておきましょう。
・質問に対する答えが一貫しているか
→ほんとうに記憶しているなら、何度聞かれても同じ答えになるはずなので、同じ内容の質問をされたときに、違う答えを言う証人は信用性が低いと判断される
・答えが具体的か
→実際には見ていないのに見たかのように証言する人は、細部を聞かれると言葉に詰まるものなので、あいまいに濁す証人は信用性が低いと判断される
・筋の通った答えになっているか
→ふつうはそんなことをしないでしょう、というような不合理な内容を証言して、その理由を説明できない証人は信用性が低いと判断される
・他の証拠と証言の内容が合っているか
→例えば、事故当日雨が降っていたことが明らかなのに晴れだったと証言する証人は、他の部分についての証言も怪しい(信用性が低い)と判断される
・その証人の立ち位置
→原告、被告のどちらかと特別な関係にある場合や、その証言が証人本人の利益に関係する内容である場合には、もちろん、自分の側に有利になるように証言する可能性が高いので、その点を割り引いて評価しなければならない。
法的な問題を解決するにあたっては、証拠の有無が結果に直結します。
ご自分では関係がないと思っていても、実は重要な証拠になることもありますので、ご相談の際は、是非、すべての資料をお持ちいただきますようお願いいたします。
堺けやき法律事務所 弁護士 深堀 知子
2017/06/26