賃貸物件を相続したとき、賃料は誰のもの?
本日は、相続財産の中に、賃貸用の不動産が含まれている場合について説明します。
例えば、貸しビルを所有していた父が亡くなり、相続人は子どもが兄と妹の2人で、双方がビルを欲しがってなかなか決着がつかなかったとしましょう。
そうしている間にも、日々賃料は発生していきます。
いったいこれは誰のものなのでしょうか?
これについては、最終的にビルを取得した人が遡って賃料も全部取得する、という考え方もできます。
しかし、最高裁の判例では、遺産分割が正式に決まるまで、賃料は、相続人全員が相続分に応じて受け取ることができる、という考え方が採用されています(平成17年7月11日判決)。
つまり、上の例で言うと、相続分はそれぞれ2分の1ずつなので、賃料が月100万円だとすると、ひとり50万円ずつを受け取れる、ということになります。
そして、遺産分割は、相続が始まった時(死亡時)に遡って効力を発生するものとされているのですが、最高裁の考え方によれば、これは遺産から発生した賃料には適用されず、いったん受け取った賃料を返す必要はありません。
上の例で言いますと、1年間揉め続けた挙句、最終的に兄がビルを取得することに決まった場合、妹は、それまでにもらった賃料月50万円×12カ月分をそのまま自分のものにできる、ということです。
そして、基本的には、賃料は、遺産分割の手続を要せず、直接、相続分に応じて分割されるものと理解されているので、理論的には、相続人がそれぞれ自分の分を行使することができます。
実際には、テナントに相続争いを見せつけるのは好ましくないので、相続人の誰かが代表で賃料を受け取り、分配方法を合意することが多いと思いますが、法律上は、兄、妹のそれぞれが50万円ずつをテナントに請求することも可能です。
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堺けやき法律事務所 弁護士 深堀 知子
2017/07/10