長年別居していると遺族年金をもらえなくなる
長年、籍を抜かずに夫と別居していて、夫が死亡した場合、妻の立場はどうなるでしょうか。
長期間別居していても、法律上婚姻関係にある限り、相続権はあります。
したがって、夫名義の財産を相続分に応じて取得することができます。
では、遺族厚生年金についてはどうでしょうか。
「妻である限り、別居していても遺族厚生年金が受け取れるから、離婚はしません」 と言われる方がいらっしゃいますが、実は大きな誤解があります。
戸籍上の妻であっても、「生計維持関係」がないと遺族厚生年金の受給者にはならないのです。
「生計維持関係」を認めてもらうには、
①「生計同一要件」と②「収入要件」を満たす必要があります。
②の「収入要件」とは、一定以上の収入がある方には遺族厚生年金が出ない、というものですが、 問題となることが多いのは①の「生計同一要件」です。
①の「生計同一要件」とは、簡単に言うと、
●住民票上または実際に同居している場合 あるいは
●同居していないまでも、経済的・人的なつながりがある場合
でないと、遺族厚生年金の支給対象にはならない、ということです。
経済的・人的なつながり、というのは、下記の事情がある場合に認められます。
●別居の理由が単身赴任、就学、入院等のやむを得ない事情によるもので、その事情がなくなれば同居を再開すると認められること
●生活費・療養費などの経済的援助が行なわれていること
●定期的に音信・訪問が行われていること
したがって、夫婦仲がうまくいかなくなって別居を開始した方が、 住民票も移し、一切連絡も取っていないし、生活費も払ってもらっていない… となると、遺族厚生年金は受け取れません。
このような場合、妻の老後の生活を考えれば、夫が元気なうちに、きちんと離婚の手続きを取り、年金分割を受けるべきだということになります。
年金分割の手続は、相手方が協力してくれれば、年金事務所で比較的簡単にできます。
協力してくれない場合には、家庭裁判所に調停の申立てを行う必要があります。
当事務所では、女性弁護士が年金分割に関するご相談をお受けしております。
相手方が手続に応じてくれないと困っている方の相談を良くお聞きしますが、相手方の協力を得なくても、離婚し年金分割を得る方法がありますので、一度ご相談ください。
2016/11/16