遺留分の対象となる相続財産の範囲は?
今回は、遺留分の対象となる財産の範囲についてご説明したいと思います。
遺留分の対象となるのは、亡くなられた時点で残っていた財産だけではありません。
一定の範囲で、生前に贈与された財産も加算され、また、逆に借金などがある場合には財産から差し引かれます。
●加算されるもの
遺留分の計算において加算される贈与は、下記のものです。
(1) 相続開始前(=被相続人死亡日)1年以内に行われた贈与
2年前に贈与の約束をしたものの、実際に贈与が行われたのは死亡から遡って1年以内だった場合、遺留分に引っかかってくるのか?ということが問題になりますが、一般的には「贈与契約を締結した時点」で判定するものとされています。
つまり、贈与契約が1年より前であれば、遺留分の計算においては加算されません。
(2) 当事者が遺留分を侵害していることを知った上で行った贈与
贈与を行なう者、受ける者の双方が遺留分権利者に損害を与えることを承知の上で行った贈与については、1年以上前にしたものであっても、遺留分の計算において加算されます。
ただし、これは、贈与が行われたときに遺留分を侵害しているということだけではなく、将来、実際に相続が始まった時点でも遺留分を侵害するだろうという認識までが必要とされていますので、実際に適用されるケースは少ないと思われます。
(3) 当事者が遺留分を侵害していることを知った上で、不相当な対価で行われた有償行為
贈与ではなく売買などの形を取っていても、それが不当に安いような場合は、実質的には贈与とみなされる、という意味です。
(4) 共同相続人の特別受益
相続人が、婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けた場合(=特別受益といいます)には、この贈与も遺留分の計算に加算されます。
期間の制限はなく、かなり以前に行われた贈与であっても、すべてが加算の対象になります。
~問題~
相続人が、妻と子ども2人(長男、二男)の場合
死亡の時点で残っていた財産は2000万円、借金は300万円。
被相続人は、1年以内に長男に500万円を贈与した。
妻の遺留分はいくら?
~答え~
遺留分の対象となる財産
=2000万円+500万円(贈与)-300万円(借金)
=2200万円
このケースでは、遺留分権者全体の遺留分率は2分の1
遺留分権者間では、妻2分の1、長男4分の1、二男4分の1の割合になる。
よって、
妻=2200万円×2分の1×2分の1=550万円
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2017/01/24